理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP556
会議情報

運動・神経生理
ラット膝関節拘縮における滑膜の病理組織学的変化
ギプス固定2週間後と16週間後との比較
*渡邊 晶規細 正博武村 啓住由久保 弘明松崎 太郎小島 聖西田 寛之立野 勝彦
著者情報
キーワード: ラット, 拘縮, 滑膜
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【目的】関節拘縮に関する報告の中で,滑膜に関する報告は非常に少なく,病理組織学的に検討したものは我々が検索した限りほとんどない。我々はラット膝関節を2週間のギプス固定を行い,2週間関節固定モデルを作成し,その滑膜における病理組織学的変化を第35回日本理学療法士学会にて報告した。そこで本研究では先行研究と同様の手順でラット膝関節を16週間ギプス固定することにより16週間関節固定モデルを作成し,滑膜における病理組織学的変化を観察し,比較検討した。【対象と方法】対象は9週齢のWistar系雄ラット4匹を用いた。ギプス固定は右後肢を股関節最大伸展位,膝関節最大屈曲位,足関節最大屈曲位で16週間施行した。ギプスは2週間毎に巻き替えを行い,浮腫や傷の有無を確認した。固定期間中,左後肢は自由とし,ラットは両前肢と左後肢を使いケージ内を移動でき,水,餌は自由に摂取可能であった。固定期間終了後,ネンブタール麻酔にて安楽死させた後,膝関節を一塊として採取した。採取した膝関節を10%中性緩衝ホルマリン液で72時間組織固定し,その後脱灰液で72時間脱灰した。関節腔内を観察できるように矢状面で膝関節を2割し,その後5%無水硫酸ナトリウム溶液で72時間中和,パラフィン包埋を行い,ミクロトームで約3μmの厚さに薄切した。それらをスライドガラスに貼付け後,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い、光学顕微鏡下で滑膜の病理組織学的観察を行った。【結果】膝蓋靭帯と大腿骨間の滑膜では,滑膜表層細胞の萎縮,滑膜下層の線維増生,脂肪細胞の萎縮,微小血管の拡張とうっ血を認めた。後部関節包と大腿骨間の滑膜でも滑膜表層細胞の萎縮,滑膜下層の線維増生,微小血管の拡張とうっ血を認めた。大腿骨後部滑膜軟骨移行部でも滑膜下層の線維増生,微小血管の拡張とうっ血を認めたが,滑膜表層細胞においては他の部位と同様に萎縮傾向を示すものが多かったが,増生を認めるものも小数見られた。炎症所見は全ての標本で認められなかった。前方大腿骨表面では滑膜が関節軟骨表層を蚕食するように増生し,軟骨と癒着していた。後方大腿骨表面や脛骨表面でも同様な滑膜の増生が見られ,滑膜と軟骨の癒着が認められた。なかには脛骨,大腿骨が滑膜の癒着により線維性に連結しているものも見られた。これらにより関節腔は狭小化し,また関節腔内に滑膜に囲まれ関節液を含む空胞を生じているものも認められた。【考察】本研究での16週間関節固定モデルによる滑膜の変化は,前回報告した2週間関節固定モデルでの滑膜の変化と類似の傾向を認めた。しかしその16週固定ではより著明であり,増生した滑膜下層の線維が軟骨移行部から軟骨を蚕食するように関節腔を埋め、かつ癒着を促し,その結果関節そのものの強直へとつながっていくものと推察された。今後は固定期間ごとの比較,固定法による比較を行い,関節拘縮における関節構成体の病理組織学的変化を解明していきたい。
著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top