理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: SP125
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産業・労務管理
介護職員の肩関節痛状況について
*桿平 司上月 芳樹本田 侑子住田 幹男
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抄録
【はじめに】産業保健分野において、介護職員は筋骨格系疾患のリスクを特に伴いやすい職種であるといわれている。今回、尼崎市社会福祉協議会に所属する介護職員を対象に肩関節痛に関するアンケート調査を行い、その実態と発生因子について検討を行ったので報告する。 【対象と方法】対象は、尼崎市社会福祉協議会に所属する介護職員360名であり、無記名による自己記入式でアンケート調査を行った。アンケート内容は、年齢・性別・勤続年数・勤務形態・現在の肩関節痛有訴状況・仕事への影響・対応・治療方法・予防対策等である。 【結果】回答者は173名(回収率48%)であり年齢は、32から82歳(平均52.0±8.0歳)。性別は全員女性。介護職としての勤続年数は0から20年(平均5.6±3.2年)。また、勤務先は全員在宅勤務であった。現在肩関節痛の有無は、「あり」74名(42.8%)、「なし」99名(57.2%)。その状況は「常にあり」31名(41.9%)「時々あり」43名(58.1%)。主な原因は「業務に原因」23名(31.1%)、「業務以外」14名(18.9%)、「原因不明」37名(50.0%)。「業務に原因」と回答した症例のうち、肩関節痛を起こした作業内容は「掃除」12名(52.2%)、「移乗動作介助」11名(47.8%)、「利用者の搬送」9名(39.1%)であった。肩関節痛の程度は、「時に軽い痛みがある」49名(66.2%)、「常に痛みがあるか時にかなりの痛みがある」25名(33.8%)であった。仕事への影響は「通常通り仕事が可能」46名(62.2%)、「我慢して通常通りの仕事が可能」28名(37.8%)。肩関節痛への対応は「行った」59名(79.7%)、「行っていない」15名(20.3%)。その治療方法は「湿布の使用」34名(57.6%)、「電気療法」25名(42.3%)、「マッサージ」24名(40.7%)であった。予防対策は「している」83名(48.0%)、「していない」90名(52.0%)。「定期的に」28名(33.7%)、「時々」55名(66.3%)であった。 【考察及びまとめ】今回の調査では、肩関節痛有訴者と非有訴者との間で年齢や勤続年数に有意差は認められなかった。肩関節痛の有無は「あり」が4割以上、しかもその状況は「常にあり」が4割以上、「我慢して仕事が可能」という者も4割近く存在しており毎日痛みを我慢しながら仕事を行っている現状が窺える。原因となる作業内容は「掃除」「移乗動作介助」「利用者の搬送」の動作でみられた。また、痛みに対する対応は、約8割が「行っている」もののその方法は、湿布の使用や電気療法、マッサージなどが主であるが、今後はもう少し詳細な作業分析を行う中で痛みを引き起こす動作への対策も考慮しなければならないと思われる。予防対策は「時々」行うが7割近くであり、定期的な体操の必要性や簡便な方法などの指導をしていく必要性もあるだろう。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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