理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: SP127
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産業・労務管理
当院の効果的な転倒防止対策
転倒事故件数の減少に向けて
*檀辻 雅広西京 幸江井之川 真紀福田 みゆき石橋 陽子清家 洋二
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キーワード: 転倒, カンファレンス, 連携
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抄録
【はじめに】医療機関での転倒事故は重要な問題であると捉えられ,転倒に関する研究が盛んに行なわれるようになっている。しかし,多くは発生要因の分析に留まり,具体的な防止方策を論じたものは少ない。また,転倒事故は病棟内で発生する頻度が高いが,医師やリハスタッフ(以下,リハ)がその防止に対して積極的な関わりを持つことが少ないのが現状である。 当院は,一般病棟と療養病棟各50床の一般病院である。今回,療養病棟内で発生する転倒事故を減少させることを目的に,関連スタッフが連携を取りながら具体的な防止対策を作成したところ,転倒件数の減少を認めたので報告する。【改善前の状況】平成14年1月1日から5月31日までに療養病棟で発生した76件(月平均15.2±5.8件)のヒヤリハットを含む,転倒事故より状況を分析した。特に注目すべきは,転倒事故は一般病棟から療養病棟への転棟の日から2週間以内に18件(23.7%)発生していた。また,88%は事前に防止対策が立てられていたが,その内の79%は実行できていなかった。 【改善策】改善前の防止対策は,1)看護師の視点による記述式サマリーでの申し送り,2)担当看護師の防止対策立案,3)病棟で転倒が発生すれば,担当看護師が防止対策を追加・修正していた。転倒事故発生の原因は,患者個々の状態に合った対策が立てられていなかったためと考え,個々の患者の正確な情報の把握と関連職種の連携による総合的な防止対策を作成することとした。具体的な改善点は,1)は転棟時看護サマリーの改善,リハと一般病棟スタッフの定例カンファレンス実施,看護申し送り時のスタッフの増員を行った。2)は転棟日に医師,リハ,看護師,看護助手による病棟カンファレンスを実施し,具体的な防止対策を立案した。3)は担当看護師が速やかに関連部所に連絡を入れ,その日の内に関連スタッフの病棟カンファレンスを招集し,その場で防止対策を再作成した。【結果】改善後の平成14年6月1日から9月30日までの転倒件数は19件(月平均4.8±3.0件)であり,改善前と比較すると改善後は有意に減少していた(p<0.01)。一般病棟から療養病棟への転棟の日から2週間以内の事故発生は0件であり,改善前と比較すると改善後は有意に減少していた(p<0.05)。【考察】転倒事故を防止するためには,個々の患者の身体・精神機能面や生活状況を正確に把握し,防止対策をより具体的に示す必要があると思われる。 今回,転倒事故件数が減少したのは,主治医をはじめ,リハ,看護部などの関連スタッフが連携し,専門性を生かしたカンファレンスを適時行うことで,より具体的な防止対策が作成できたためと考える。これにより,看護やケアをする誰もが個々の患者に応じた援助を実行できるようになった。また,連絡を徹底し,カンファレンスを重ねることで,情報の共有化と意思統一が図れたものと思われる。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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