理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: TO096
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健康増進
地域保健所における「転倒予防教室」の参加者特性と介入効果
*加藤 智香子猪田 邦雄松本 恵美子松田 幸子南田 美保青木 眞弓島岡 清
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抄録
【目的】近年の高齢化社会にともない,健康増進,介護予防の観点から地域保健所でも「転倒予防教室」が実施されるようになってきたが,その効果の検討は十分されていない.そこで,今回,教室参加者の特性と運動機能面での介入効果について検討したので報告する.【対象】対象は保健所での転倒予防教室に参加し,全ての評価が実施できた女性40名.平均年齢65.7±6.0歳(57-82歳).【方法】初回時に医学的評価,転倒リスク評価,運動習慣評価,運動機能評価としてBMI(Body Mass Index:体格指数),握力,長坐位前屈,健脚度(10m全力歩行,最大一歩幅,踏み台昇降),継ぎ足歩行,開眼片足立ち(30秒間)を実施した.2回目,3回目にはストレッチ,筋力強化,バランス,歩行などの運動指導を行い,家庭でも行うよう指導した.最終回時に再び,運動機能評価を行い介入効果を検討した.なお,統計学的処理には参加者特性をみるための群間比較にはMann-Whitney検定を,介入効果の検討にはWilcoxonの符号順位検定を用い,有意水準5%以下を有意とした.【結果】I.参加者特性<医学的評価>高血圧症ありが11名27.5%,高脂血症ありが19名47.5%,膝関節痛ありが14名35%,腰背部痛ありが11名27.5%であった.<転倒リスク評価>転倒発生率は13名32.5%であり,「転倒に対する不安大きく,転倒が怖くて外出を控える」が14名35%いた.転倒あり・なし群における運動機能の有意な違いはみられなかった.<運動習慣>運動習慣があったのは26名65%であった.運動習慣あり・なし群における運動機能の有意な違いはみられなかった.II.運動機能面での介入効果10m全力歩行,最大一歩幅には有意な向上がみられた.運動習慣あり・なし群に分けて介入効果を検討すると,あり群では10m全力歩行,最大一歩幅とも有意な向上がみられたが,なし群では10m全力歩行に有意な向上はみられなかった.【考察】参加者の特性として60歳代が多い,高血圧,痛みなど医学的問題を抱えている者も多い,転倒発生率は3割程度だが,運動機能の低下はみられていない,何らかの運動習慣をもっている者が多いことがわかった.運動機能面での介入効果として10m全力歩行,最大一歩幅に有意な向上がみられた.しかし,これには,運動習慣あり群の向上が寄与しており,最も対象となるべき運動習慣なし群では歩行能力に有意な向上はみられなかったことがわかった.介入効果を検討する際には,参加者の特性をよく理解し,特性別に検討する必要性が考えられた.今後.さらに参加者特性と介入効果について検討を重ねていきたい.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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