抄録
【はじめに】徳島市では平成14年1月より「お達者倶楽部」と名づけた老人保健法に基づく老化予防機能訓練事業(以下、本事業)を開始した。本事業は1年間を通して毎週1回の頻度で実施し、自己健康管理や運動習慣を身につけるとともに、外出機会を増やし、要介護状態になるのを予防することを目的としている。我々は徳島市から本事業の協力要請を受けた徳島県理学療法士会の派遣要請を受け、本事業に当初から関わり約1年が経過した。そこで今回、我々が本事業で実施してきた内容を紹介するとともに、その効果を判定する目的で行った体力測定等において良好な結果を得たので、若干の知見を加えて報告する。【本事業の実施内容】本事業は徳島市保健センターにて毎週金曜日の午前または午後に90分間実施した。参加者は医学的リハビリテーションや介護保険の対象者を除いた40歳以上の徳島市民で、自力で来所可能な者である。その内容はバイタルサインを測定後、理学療法士による健康講話として、日頃家庭で行う体操や運動指導の他、個別の質問に応じて腰痛・膝痛等の予防法や体操の紹介、高血圧や便秘・骨粗鬆症に対する運動等の指導を行った。その後、柔軟体操や筋力増強運動を行い、最後にバランス能力の改善等を目的としたレクリエーション等を実施した。また、運動習慣の定着を目的にした運動日誌の配布を毎週行った他、スポーツドクターによる健康講話や相談を毎月1回実施した。【対象及び方法】本事業に初回より参加した13名のうち、継続して参加できた10名(全員女性、平均年齢68.7±7.9歳)を対象とし、平成14年1月と10月に体力測定を実施した。測定項目はBMI・体脂肪率・握力・立位体前屈・開眼片脚立位時間・最大1歩幅・40cm踏み台昇降・10m全力歩行速度・タンデム歩行・6分間歩行距離の計10項目である。そして、1月の測定結果(以下、初回結果)と10月の測定結果(以下、最終結果)を比較検討した。統計学的解析はt-検定およびχ二乗検定を用いた。また、平成14年10月時に参加していた14名にアンケート調査を実施した。【結果】開眼片脚立位時間・最大1歩幅・40cm踏み台昇降・10m全力歩行速度については、初回結果に比べ最終結果では有意な改善が認められたが、その他の測定項目については改善傾向にあったものの有意な改善は認められなかった。また、アンケート調査の結果からは92.9%の者が本事業を楽しみにしていた他、本事業をきっかけに「外出の増加」は84.6%の者に、「週4日以上の運動習慣」は85.7%の者に認められた。【考察】今回我々が行ってきた約1年間におよぶ本事業では、バランス能力や健脚度についてある程度効果が認められたものの、体脂肪率や柔軟性、持久力等については有意な改善が認められず、これらを改善する内容が今後の課題として挙げられた。さらには、本事業終了後の対象者の外出や運動習慣の継続、身体機能の変化、転倒の有無に関しても追跡調査を行いたいと考えている。