抄録
【目的】 総務庁国民生活に関する世論調査(1996)では現在の関心事について、自分の健康についての関心が最も高く、老後の生活設計、家族の健康と次いで高い。このことからも今後ますます健康増進活動が盛んになると予測される。国民の多くが健康に関心を持ち、マスメディアを通じて健康増進には何が大切かという情報を簡単に入手できる昨今、我々理学療法士は国民一人一人が主体となって行う健康活動を側面から援助するというスタンスで保健事業に関わる必要があると思われる。このような視点から我々は7年間にわたり地域住民主体の健康増進活動に継続して関わっている。今回は、健康増進活動の参加者にアンケートを実施し、本活動についての意識調査をしたので報告する。【対象と方法】 健康増進活動は広島県にある人口6,000人余り、高齢化率29.3%の町で行っており、内容は体力測定の結果を参考にした個別指導、ウォーキングや運動指導、健康教育についての講演会や栄養指導を行っている。今回は平成14年度の活動に参加した対象にアンケートを実施し、回答が得られた213名の結果について集計した。対象の内訳は男性59名、女性154名であり、平均年齢は男性64.8±14.8歳、女性66.2±10.9歳であった。【結果と考察】 これまでの累計参加回数では7回全部に参加が21%で最も多く、次いで6回目が18%であり、初めてと答えた者は最も少なく8%であった。多くの者が毎年のように参加し、新たな参加者もいることが分かった。日頃気を付けて行っている健康活動については、散歩・ウォーキングが91名(43%)で、次にラジオ体操や体操が36名(17%)で多かった。また、フォークダンス・社交ダンス14名、グランドゴルフ12名、バレー・ソフトバレー8名と健康増進と趣味とを兼ね備えた活動をしている者も多くみられた。これらは地域住民が共同で楽しく運動するという現れと考えられ、まさに地域住民主体の健康活動が行われている結果と考えられた。この活動で役だったことについては、自分の体力が分かったが144名、健康について意識するようになったが73名であり、栄養に留意するようになったが38名、生活に留意するようになったが35名であった。本活動を通じて、多くの参加者が健康について意識するようになり自主的に健康活動をするようになったものと思われた。本活動について、213名中204名が大変良い若しくはまぁまぁ良いと答え、210名が次回も是非参加したい若しくはできれば参加したいと答えた。 近年盛んに行われている転倒予防教室なども身体機能面に関する本質は健康増進であろう。地域密着型の健康増進活動では、体力測定のデータ分析や詳細な結果のフィードバックのみにとらわれず、我々理学療法士は地域住民主体の活動を側面からサポートしながらも住民にとってなくてならない存在になる事が肝要であろう。