理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: BP648
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運動・神経生理
徒手的な筋圧迫が筋活動におよぼす影響
大腿四頭筋において
*根地嶋 誠横山 茂樹田中 正直大城 昌平
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キーワード: 筋圧迫, 筋活動, 大腿四頭筋
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抄録

【はじめに】臨床上、徒手的に筋圧迫することによって関節運動時における疼痛が軽減することを経験する。このような筋圧迫が筋活動に及ぼす影響について検討した報告は少なく、筋圧迫が筋収縮や筋緊張にどのような影響を与えるかということは明らかではない。そこで本研究では、大腿直筋において徒手的な筋圧迫によって大腿四頭筋の筋活動に及ぼす影響について検証する。【方法】対象は下肢に障害のない健常男性10名(平均年齢23.7±1.3歳)とした。測定筋を右側の内側広筋、外側広筋、大腿直筋とし、十分な皮膚処置後、電極中心間距離20mmにて、各筋腹の中央に貼付した。測定肢位はサイベックスを用いた端坐位における、股関節80度屈曲位、膝関節60度屈曲位とした。まず膝伸展時最大等尺性収縮(MVC)におけるピークトルクの測定を3秒間3回行い、最大値(PT)を求めた。次に(1)60%PT時の膝伸展時等尺性収縮をおこなった場合と(2)筋圧迫を加えた上で60%PT時の膝伸展時等尺性収縮をおこなった場合について筋活動を測定した。なお、60%PTは視覚的フィードバックとし、目標値に達した時点から3秒間計測し、3回施行した。このとき足関節は背屈とし、両上肢は備え付けのハンドルを握り、可能な限り上体を動かさないよう指示した。また圧迫方法は、一名の理学療法士が一側の母指を使用し、部位は大腿直筋の電極間中心部より5横指下、強度は痛みが出現しない程度、方向は筋走行に対し垂直に圧迫を加えた。なお、実験に先立ち、課題遂行の正確性、圧迫強度の程度を確認した。解析方法は、キッセイコムテック社製BIMUTAS2を用い、各条件の収縮した3秒間のうち中央2秒間の積分値を算出、3回の平均を求めた。次に、得られた各筋におけるMVC時の積分値を基準に正規化し、%IEMGとして表した。圧迫の有無による影響を比較するためWilcoxon の符号付順位検定を用い、有意水準は5%未満とした。【結果および考察】内側広筋と外側広筋における筋圧迫の有無による差はみられなかった。一方、大腿直筋は筋圧迫を加えることよって%IEMGが有意に低下した(p < 0.05)。これは、筋圧迫により筋の形態や筋内圧が変化したことで、筋活動が抑制されたものと推察される。また大腿直筋を圧迫した場合、圧迫しない場合より低い値を示した症例が10名中9名存在したが、この中で内側広筋、外側広筋のいずれか高まった症例が7名存在した。これらのことから大腿直筋を徒手的に筋圧迫することによって大腿直筋の筋収縮は低下するとともに、内側広筋もしくは外側広筋の筋収縮が高まることによって筋出力が変化したと推察される。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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