抄録
【はじめに】立ち上がり動作は、日常の活動性を向上するためには重要であり、理学療法や、退院時指導、病棟内練習に取り入れられやすい。立ち上がり動作は種々の方法があり、動作に影響する因子も多い。特に上肢は自由度が高いため立ち上がり動作に大きな影響を与えると思われる。そこで、立ち上がり時の上肢の位置を変化させた時の最大体幹前傾角と体重心最大前方移動距離、下肢筋群・体幹筋に及ぼす影響を検討した結果、若干の知見を得たので報告する。【対象及び方法】対象は健常成人5名(男性4名、女性1名)平均年齢20.4±0.5歳であった。立ち上がり動作は、上肢の位置を_丸1_腰に手を当てる_丸2_両膝を両手で押さえこむ_丸3_両手を把持する、の3通りとした。3次元動作解析にはVICON370(OMG社)、Kistler(Kistler社)を使用し、反射標点は両側の肩峰、C7、上前腸骨棘、大転子、膝関節外側裂隙、外果、第5中足骨骨頭に貼付した。台の高さは下腿長の100%高、開始肢位を両膝関節屈曲90°とした。速度設定は被検者の任意とし、各動作5回ずつ測定し、体幹最大屈曲角・COG最大前方移動距離を臨床歩行分析研究会で用いられている解析ソフトを用い算出した。表面筋電図は銀塩化銀電極を用い電極間距離2cmで右側の第3,4間脊柱起立筋:PVM、大腿直筋:RF、前脛骨筋:TA、腓腹筋内側頭:GMから導出した。表面筋電図の解析にはBIMUTAS_II_(キッセイコムテック社)を使用し、各筋活動の潜時、ピーク値の積分値を算出した。立ち上がり動作の開始から終了までの時間を100%として体幹最大屈曲角度・出現時間、体重心最大前方到達距離・到達時間を百分率で算出した。統計的検定には分散分析を用い、P<0.05を有意水準とした。【結果】_丸1_体幹最大屈曲角_丸2_体幹最大屈曲出現時間_丸3_COG最大前方到達距離に有意差は見られなかった。_丸4_COG最大前方到達時間はP<0.05で有意差があり、両手把持の時、67.7±8.2%で到達しP<0.01で有意差がみられた。_丸5_筋活動電位ピーク積分値より、各動作パターンの筋活動はTAより開始していた。また、筋活動パターンは、腰に手と両手把持は類似していた。膝押さえは、腰・両手把持と比較すると、COG最大前方到達距離が長く、体幹最大屈曲角が生じる前にCOGの上昇が見られるが、有意差はなかった。しかしながら、RFの筋活動量に高い傾向があった。【考察】立ち上がり動作は、TAの筋活動より開始することから、上肢の位置に関係なく下腿の引き出しにより動作が開始すると示唆された。また、膝押さえでは、COG最大前方移動距離と体幹最大屈曲角度が、腰・両手把持よりも高い傾向から、体重心の移動においては非効率的な立ち上がり方と考えられた。