理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 134
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理学療法基礎系
運動負荷試験実施時における上肢筋群の筋電図積分値から算出した作業閾値の検討
*小林 巧由利 真堀 享一上田 将之矢部 江里子山中 正紀
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抄録
【はじめに】無酸素性作業閾値(Anaerobic Threshold、以下AT)は呼吸・循環系の総合的な運動耐容能を示す指標として意義があるとされている。AT測定において換気性作業閾値(Ventiratory Threshold、以下VT)の測定は非観血的に行えるとして臨床において広く利用されている。このVTと運動負荷中の筋活動の関連性について、Moritani(1980)らが自転車エルゴメーターによる漸増負荷運動中に測定した筋電図積分値の変曲点がVTと高い相関があることを報告した。それ以来、この変曲点については様々な報告が行われているが、これまで筋電図積分値から算出されるこの変曲点についての上肢筋群における報告はほとんど見当たらない。本研究の目的は、アームエルゴメーターを使用した漸増運動負荷試験より上肢筋群の筋電図積分値が非直線的に増加する点(Integrated electromyogram threshold、以下IEMGT)を算出し、VTとIEMGTの関連性について検討することである。
【対象と方法】対象は上肢に整形外科的あるいは神経学的な異常が見られない健常男性9名(平均年齢24.1歳、身長173.4cm、体重62.0kg)とした。方法は、CYBEX社製アームエルゴメーターMET300を使用し、30Wで3分間のウォーミングアップ後、30秒毎に5Wの漸増負荷運動を行った。この時のクランクの回転数は60rpmとした。運動中の呼気ガス分析はSensor Medics社製Vmax29cを使用しBreath by breath方式により測定し、各個人のVTを算出した。また、同時に上肢筋群の筋活動を表面筋電図(Mega electronics社製ME-3000P)にて記録し、導出筋は上腕二頭筋および上腕三頭筋とした。IEMGTは漸増負荷開始後の2分間の平均積分値を用いて算出した回帰直線から3点連続して逸脱する最初の点を求め、その前後において2本の回帰直線を描き、その交点とした。VTおよびIEMGT時のの酸素摂取量(以下、VO2)を算出し、これらについての比較および相関関係について検討した。統計処理は、両者の比較にはStudent-t検定を、相関関係についてはピアソンの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。
【結果】VTは9名中8名に、IEMGTは上腕二頭筋で8名、上腕三頭筋で3名に検出された。VTおよび上腕二頭筋のIEMGTの両方が検出された7名において、VTとIEMGT時のVO2には有意な差を認めなかった。また、両者の間には有意な相関関係を認めた(r=0.76、p<0.05)。
【考察】本研究結果より、筋の違いによりIEMGTの出現数に差が見られた。これは筋繊維タイプの違いやアームエルゴメーター駆動に対する筋の貢献度の違いなどが推察された。また、VTと上腕二頭筋のIEMGTには有意な相関が見られ、上肢の運動負荷に対する呼吸応答と筋活動は関連性が高いことが考えられた。呼吸循環機能と筋機能との関連性について考慮することは重要であることが考えられた。
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© 2004 日本理学療法士協会
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