理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 168
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理学療法基礎系
異なる負荷課題における内側広筋斜頭と外側広筋の活動比の相違について
*古川 公宣下野 俊哉
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抄録

【はじめに】内側広筋斜頭(VMO)と外側広筋(VL)は,その線維配列の方向性から膝蓋骨の軌道に対しての側方要素を有し,膝関節伸展時の安定化機構への主な影響因子として挙げられている.しかし,この機構に関する過去の知見は一致しておらず,Powers(1998)やKay(2001)のレビューでも明確なエビデンスには得られていない.今回我々は,膝関節伸展運動に3つの負荷方法を適用し,更にその遂行速度を変化させることで各四頭筋構成体の筋活動を測定し,若干の知見を得たので報告する.
【方法】健常成人11名(男性6名,女性5名)を対象とした.被験者の年齢,身長,体重の平均値はそれぞれ27.4±4.2歳,162.1±6.3cm,57.6±6.6kgであった.課題1は治療台上に端坐位で着座し,足関節部に重錘バンド(2kg)を装着して膝関節伸展を行い,課題2は同様の肢位で足関節部に伸縮性ゴムベルトを装着し,伸展への抵抗とした.課題3は立位にてスクワット運動を行った.各課題の遂行速度は90deg/secと180deg/secとし,膝関節の運動範囲は0-90°の範囲とした.表面筋電計MyoSystem 1200にビデオ同期システムMyoVideoを用いてVMO,VLの筋活動を測定し,課題反復中に連続して3回安定した運動が行えている部分を選択しデータ処理を行った.課題を求心性収縮相(求心相)と遠心性収縮相(遠心相)に分け,各相の平均振幅を求めて3秒間の最大等尺性膝関節伸展中の平均振幅で除すことにより標準化し, VMO/VL比の相違を検討した.統計学的分析にはt検定と分散分析を用い,有意水準は5%未満に設定した.
【結果】VMO/VL比は課題間で比較した場合,90deg/secで遠心相が課題2,1,3の順で有意に高値を示し(p<0.01),180deg/secでは求心相で課題3,2,1の順に有意に高値を示した(p<0.01).また,速度による比較では課題1,3の両相において比が有意に高く(課題1-両相,p<0.01;課題2-両相,p<0.05),相での比較は180deg/secでの課題1のみが有意に求心相が高値を示した(p<0.05).
【考察】VMO/VL比は課題速度の増加によって大きくなる傾向が強く,これはVMOの活動が有意に高いことを示している.特に求心相では初動期の膝蓋骨の適切な軌道を獲得するためにその活動が必要になると推測される.課題2は他の2つの課題と異なり,膝関節伸展に対して漸増,減的に負荷が変化する.この特性の差が結果に影響していることが考えられ,各相をいくつかに区分し検討する必要性が示唆された.
【まとめ】VMO/VL比は,負荷様式によって変化することが明らかとなった.従って,四頭筋の強化訓練は負荷方法の選択によって選択的強化が行える可能性が示唆された.

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© 2004 日本理学療法士協会
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