抄録
【目的】当センターでは救命救急センターと連携し、多発外傷患者に対し、急性期から社会復帰まで経過を追ってフォローしている。長期にわたり同一施設で経過を追っている報告は少ない。今回、アウトカム研究の一端として、多発外傷患者に対し健康関連QOLの包括的尺度であるSF-36(MOS Short-Form 36-Item Health Survey)を実施した。同時に外傷重症度、入院期間、社会復帰までの期間を調査し、これらとの関連を検討したので報告する。
【方法】対象は、2002年4月から2003年3月末までの1年間に、当センター救命救急センターに入院し、リハビリテーション科に依頼があった多発外傷患者25名のうち、復職(学)までの追跡が可能だった15名(男9名・女6名、16歳から55歳、平均年齢26.9歳)だった。全例が交通事故による受傷であり、5名が回復期リハ病院を経由していた。社会復帰時には全例が独歩可能だった。リハ科フォロー終了時に最終評価の一つとしてQOL評価を行った。QOL評価にはSF-36を用い、身体機能(以下PF)、日常役割機能・身体(RP)、日常役割機能・精神(RE)、心の健康(MH)、体の痛み(BP)、全体的健康感(GH)、活力(VT)、社会生活機能(SF)の8項目について、それぞれ100点満点に換算した。外傷重症度はISS(Injury Severely Score)にて表した。診療記録から、他院も含めた入院期間、社会復帰までの期間を調査し、SF-36の各項目およびISSとの関係を調べた。さらに国民標準値(国標)との比較を行った。統計学的検定にピアソンの相関係数を用い、国標との比較にはt検定(対応のない)を行った。
【結果】入院期間は30日から196日、平均87.4日であった。受傷から社会復帰までの日数は35日から408日、平均292.7日であった。外傷重症度は、ISS22点から57点、平均31.1点であり、頭部外傷、胸部・腹部外傷および骨盤・四肢骨折を合併していた。ISSと入院期間との間には高い相関が認められたが、SF-36の各項目との間に相関はみられなかった。入院期間と、SFおよびMHの間に負の相関が認められた。社会復帰までの期間においても、RE、MH、GH、BPとの間に負の相関が認められた。国標との比較では、PF、SF、MHが有意に低い値であった(p<0.05)。
【考察】今回の調査では、外傷が重症であるほど入院期間が長期化し、社会復帰にも影響していた。QOL調査によって明らかとなった主観的健康感は、外傷の重症度との関連は低いが、入院期間および社会復帰までの期間が長期になるほど、健康感が損なわれている傾向がうかがえた。社会復帰を考慮する場合、入院期間が長期化する症例では、常に心の健康管理と社会との接点を維持する必要性が示唆された。
【まとめ】社会復帰が可能となった多発外傷患者15名に対し、SF-36を用いてQOL評価を行った。主観的健康感は外傷重症度よりも休職期間に影響される傾向にあった。