抄録
【はじめに】
動作加速度が計測できるアクティブトレーサー(以下ACT)は、活動量を各設定加速度CHの総カウント数として捉えることから、患者の活動量を量的な評価する上で有効であるといわれている。しかし、質的な評価としてどのような動作(種類・速度)をしているのか判別するのは難しいと考えられている。そこで今回、ACT計測データから基本動作種類を判別できる方法確立のための基礎的知見を得る目的で、健常者を対象に3種の動作速度で行わせた4種類の基本動作において、どのような加速度領域の分布特性があるのかを検討し、若干の知見を得たので報告する。
【対象と方法】
対象は実験参加に同意した健常者6名、男4名、女2名、平均年齢22.3±1.0歳であった。対象とする各基本動作を「遅い」「普通」「速い」の速度で行わせた。ACT(GMS社製AC-301)をベルトにて臍部の高さ、腹部中央に装着した。加速度設定は0.02、0.05、0.1Gから0.05G間隔で3CHずつ、実験を繰り返し0.7Gまで計測した。各設定加速度以上の加速度が0.1秒連続した場合を1カウントとし、1分毎に本体内のメモリーに取り込むよう設定した。対象動作以外の加速度を発生させないため、測定開始後1分から2分までに動作を行わせ、それ以外は安静にし、その間の各CHでの総カウント数を用い、各動作間の加速度領域分布の特徴を検討した。統計は分散分析を用い有意水準5%とした。
【結果】
各CHでの総カウント数は、歩行では他の動作より「遅い」「普通」「速い」の全ての動作速度において、それぞれの加速度全領域で有意に多い値を示した。「遅い」動作では、寝返りと立ち上がり動作間に有意差はなかったが、0.02Gで起き上がりが寝返りより有意に多く、0.05Gで起き上がりが寝返りと立ち上がり動作より有意に多い値を示した。「普通」動作では寝返りと立ち上がりには有意差を認めなかったが、0.02、0.05、0.1Gで起き上がりが寝返り、立ち上より有意に多い値となった。「速い」動作では、寝返りと起き上がりと立ち上がり動作間には有意差はみられなかった。
【考察】
本研究結果より、ACT計測により、歩行は他の基本動作と十分に識別できる可能性が示唆された。「速い」動作では歩行以外の動作の識別はできなかった。基本動作の動作種類判別のための3CHの設定加速度ポイントは、より高齢者の動作速度に近い「遅い」と「普通」の動作においては、寝返り、立ち上がりと起き上がりに有意差を認めた0.05Gと、歩行以外の動作では有意差を認められなかった0.15G、歩行以外の動作の総カウント数がほぼ0になる0.2から0.35での測定が適していると考えられた。しかし、寝返りと起き上がりについては特徴の違いを捉えることができなかったが、今後、基本動作の動作判別には身体各部の傾斜等も含めさらに研究する必要がある。