抄録
【はじめに】
脳卒中片麻痺患者(以下,CVA患者)の歩行能力に与える因子として,麻痺側荷重能力・麻痺側最大重心移動能力が関連しているという検討が多数報告されている.しかし,歩行能力との関連性を考えると,麻痺側荷重能力・麻痺側最大重心移動能力がもたらす安定性等の量的問題は検討されているが動作速度等の問題に関しては,散見される程度である.
そこで今回我々は,合図と共に立位から麻痺側支持での片脚立位動作を行い,片脚立位動作までに要した時間(以下,反応時間)が歩行能力に与える影響を検証することとした.
【対象と方法】
対象は, CVA患者30名,平均罹患期間は47.1ヶ月±43.4であった.
計測は,ユニメック社製のグラビコーダーJK101を用い,裸足にて立位をとり,合図(音刺激)と共に,可及的に速く非麻痺側下肢を挙上し,麻痺側片脚立位動作を行った.各々5回づつ計測を行い反応時間を求めた.
歩行能力として,10m歩行時間(以下,10m-T),努力性10m歩行時間(以下,Max10m-T),timed up and go test(以下,TUG),FIMの歩行項目(以下,歩行FIM)を求めた. また,動的バランスの指標として,立位前後開脚麻痺側前型肢位での前方リーチ距離を求めた.
検討は,初期測定日より24時間以後に再測定を行い,反応時間の再現性を求めた.また,反応時間と歩行能力・麻痺側前型リーチ距離の相関を求めた.
統計学的解析には級内相関係数(以下,ICC)とpearson係数を用い,有意水準は5%とした.
【結果と考察】
反応時間の再現性は,高い再現性を認めた.歩行能力との相関においては,特に歩行FIM間において,高い相関を認めた.
最近では,転倒予防教室においても反応速度評価とその向上の重要性が高まってきている.健常高齢老人はもちろん,麻痺や痙縮等の影響により,随意性の低下が動作を阻害するCVA患者は,より反応速度評価が重要と考える.
歩行能力に関与する因子として,重心移動距離・面積,stage,麻痺側の支持性,非麻痺側の筋力等があり,反応速度もその一要因である.今回の結果より,片脚立位動作時の反応時間が歩行能力と関連性があるということが考えられた.
今後はデータ数を増やして行くと共に,筋電図を用い刺激が入ってから筋が収縮するまでの時間(PMT)と筋が収縮してから活動が起こるまでの時間(MT)に分け,どちらにより時間を要しているのか,また健常者と比べCVA患者の筋発火パターンの違いを検討していく必要もあると考える.