抄録
【はじめに】脳卒中片麻痺患者において、起立矯正台に起立後、歩行する際に下肢の降り出しやすさや、歩きやすさを訴える患者が多いように思われる。そこで、今回我々は、起立矯正台使用前後での歩行分析を行い、若干の知見を得たので報告する。
【方法】対象は、理解力に問題なく、装具なし(杖の使用は許可)での自立歩行が可能な脳卒中片麻痺患者22名(男19名、女3名)であった。また、全ての対象は、足関節に可動域制限がなく、下肢などに整形疾患などの合併症のない者とした。診断名は、脳梗塞11名、脳出血11名で、麻痺側は、右8名、左14名であった。平均年齢は、58.7±7.5歳で、発症からの平均経過期間は、77.1±64.6ヶ月であった。下肢Brunnstrom Stageは、3が6名、4が6名、5が10名であった。歩行能力は、独歩10名、杖使用4名、装具使用3名、杖・装具使用5名であった。測定方法は、足関節背屈15度で起立矯正台に20分起立してもらい、その前後で裸足での歩行分析を行った。測定には、ニッタ株式会社製ゲイトスキャン4000を使用し、距離要素(重複歩幅、歩幅、歩隔)、時間要素(重複歩時間、1歩時間、遊脚時間、両側接地時間)、歩調、歩行速度を測定した。統計処理には、t検定(p<0.05)を用い、各項目の健側・患側をそれぞれ起立前後で比較検討した。
【結果】距離要素は、起立後で患側・健側ともに重複歩幅、歩幅は増加し、歩隔が減少する傾向がみられたが、有意差は認めなかった。時間要素では、起立後に患側・健側ともに全て減少傾向がみられ、患側では重複歩時間、1歩時間、遊脚時間、健側では重複歩時間に有意な減少を認めた(p<0.05)。歩調、歩行速度は、起立後に有意な増加を認めた。(p<0.05)。
【考察】脳卒中片麻痺患者の起立矯正台起立前後の歩容変化を比較検討した。起立後、距離要素には有意な変化は認められなかったが、時間要素で患側の重複歩時間、1歩時間、遊脚時間に有意な減少を認め、歩調、歩行速度に有意な増加を認めた。起立矯正台に起立することにより下腿三頭筋が持続的に伸張され、下腿三頭筋の痙性が抑制されたことが考えられる。このため、患側下肢振り出し時の内反尖足が軽減し、振り出しが容易になり、患側の時間要素が減少したと思われる。患側時間要素の減少により、歩調が増加し、それに伴って歩行速度も増加したことが考えられる。また、距離要素に有意な変化が認められなかったのは、下肢を大きく振り出す時には、足関節だけでなく骨盤・股・膝関節の動きも重要であり、足関節内反尖足は軽減しても、その他の異常パターンは改善していないため歩幅などに有意な変化がなかったと考えられる。今後は、症例数を増やすとともに、起立直後のみでなく起立後の時間経過により、歩容がどのように変化していくかなども検討していきたい。