理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 889
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理学療法基礎系
把持筋力計による検者間の信頼性および検者の固定方法について
肩関節外旋・内旋筋力の筋力測定時
*井上 和久原 和彦磯崎 弘司丸岡 弘久保田 章仁田口 孝行西原 賢細田 昌孝藤縄 理中山 彰一溝呂木 忠江原 晧吉細田 多穂
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抄録

【目的】把持筋力計(hand-held dynamometer、以下HD)の筋力評価は、一定以上の経験年数や技能を有する検者において、その信頼性は比較的高いといわれている。そこで今回、検者間の信頼性についてHD経験群とHD非経験群(以下経験群、非経験群)とを比較し、また第37回の本学術大会において報告した2種類の検者固定方法の違いによる影響を明らかにするため、検者固定方法別についても検討したので報告する。
【方法】対象は、本研究に同意を得た若年女性健常者10名で、検者は6名の理学療法士(HD8から10年経験者3名:経験群、HD経験なし3名:非経験群)で測定を行った。測定機器は、HD(アニマ社製μTas MT-1)を使用し、左右の肩関節外旋筋力および肩関節内旋筋力を徒手筋力検査法に準じ腹臥位で測定した。測定はメイクテスト法を使用して、5秒間等尺性最大筋力を左右それぞれ3回測定し、その平均値を測定値とし、検者間の測定誤差についても算出した。検者の固定方法としては2種類の方法(肘関節伸展位法:以下EE法、肘関節30°屈曲位法:以下EF法)にて測定した。経験群と非経験群との比較統計は、SPSS Ver.10を使用し、分散分析およびt検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】経験群と非経験群の測定比較は、肩関節内旋において、EE法・EF法ともに経験群の測定値が大きかった(EE法:p<.01、EF法:p<.05)。肩関節外旋においては、EE法で経験群の測定値が大きく(p<.01)、EF法では有意差はなかった。また、固定方法による測定誤差は、内旋でEE法(測定値87.8±14N、測定誤差42.5±13.8%)とEF法(測定値87.5±17.5N、測定誤差54.1±17.7%)間で、測定誤差はEE法<EF法となった(p<.05)。外旋ではEE法(測定値79.7±10.3N、測定誤差34.5±11.9%)とEF法(測定値80.8±12N、測定誤差39.4±17.9%)間に有意差は認められなかった。
【考察】肩関節内旋のEE法・EF法および肩関節外旋のEE法において、経験群は非経験群に比べ有意に大きい測定値が得られた。このことは、経験群においてHD評価でより最大筋力を発揮させる筋力評価で、経験群の測定の信頼性が高かったと考えられる。一方、肩関節外旋おいて、EF法で有意差を認めなかったことは、外旋のEF法で測定値にバラツキがあり固定方法による測定値の誤差が影響したものと考えられる。固定方法による測定誤差については、内旋においてEF法はEE法に比べ有意に測定誤差が大きかった。今後、固定方法による測定誤差についてさらに検討すべき課題であると考えられた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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