抄録
【目的】理学療法では体幹機能の重要性が指摘されているが、治療指向的な体幹機能検査法は少ない。これまでのSIAS(Stroke Impairment Assessment Set)やTrunk control test等は信頼性や重症度の分類には優れているが、治療に反映させる情報を得るには限界がある。そこで我々は、治療指向的な臨床的体幹機能検査(FACT: Functional Assessment for Control of Trunk)を開発し、その検者間信頼性と内的整合性を検証することを目的とした。
【開発経緯】当初はBrunnstrom Recovery Stageと同様に典型的回復段階に基づくstage化を試みた。試用した結果から、判定の正確さを高める為に全てのテストをパフォーマンス化し、そこからテスト法の詳細を定めた。また、難易度が同じ項目を集約して10項目・20点満点のパフォーマンステスト(FACT)とした。その特徴として全項目を端座位で実施でき、道具を使用せず、習熟すれば5分以内で測定可能な検査法となり、静的姿勢保持、随意的重心移動、伸展・回旋等の自動運動が含まれている。
【対象と方法】対象は入院中の脳卒中者23名(男性15名、女性8名。年齢54歳~87歳、平均66歳。右片麻痺9名、左片麻痺12名、四肢麻痺2名。発症より平均92±37日)とした。指示理解が困難、脊椎の障害を合併して痛みを生じる例は除外した。また、全ての症例に対し研究の主旨を説明し同意を得た。
方法は理学療法士(以下PT)5名で10通りのペアを作り、それぞれの対象者に対して同じ日、同じ条件で別々に検査を実施した。なお、ペアの1人は通常の理学療法を実施しているPTとした。合計点をSpearmanの順位相関係数により2人の検者間の相関を検討し、各項目毎に検者間の合致率を%で算出した。また、各テスト項目の内的整合性をクロンバックのα係数を使用して検討した。
【結果】FACTの合計点は検者間で高い相関が得られた(r=0.96、p<0.01)。検査項目ごとにみると5項目で23組全てが合致し(合致率100%)、4項目のテストで2組に1段階の違いがあり(合致率91、3%)、1項目で3組に1段階の違いがみられた(合致率87、0%)。評定が異なった11のうち72.7%は担当PTの評定値が高くなった。また、内的整合性は、α=0.81であった。
【結論】本検査法の検者間信頼性、内的整合性は高いことが示された。4.8%(11/230)で検者間での違いがみられ、担当PTの方が被検者の最大能力を引き出し易い為か評定が高い傾向にあった。FACTは体幹機能を簡便に定量化でき、問題点を細かく分析できるために治療指向的な検査法として有用性が期待できる。