抄録
【はじめに】
体幹機能は起居動作や日常生活動作、歩行の獲得に果たす役割が大きく、体幹機能障害に対する評価や治療方法が提唱されている。これまでの体幹機能検査法は、重症度を判定するのに優れる一方で、比較的天井効果が大きく、段階化が粗いものが多かった。そのため筆者らは、10項目20点満点のパフォーマンステスト(臨床的体幹機能検査: FACT)を開発し、その信頼性と妥当性を検証してきた。
本研究では、FACTを用いて脳卒中片麻痺者の体幹機能障害の経時変化を明らかにすることを目的とした。
【対象と方法】
対象者は、A病院(回復期リハビリテーション病院)に入院中の脳卒中患者43例(脳出血13例、脳梗塞30例。右片麻痺18例、左片麻痺23例、両片麻痺2例。男性20例、女性13例)であった。年齢は27~89歳(平均61.4±13.7歳)で、初回検査時には発症から19~236日(平均83日・中央値77日)であった。対象者を毎週一回検査を実施するA群(25例)と、隔週一回実施するB群(18例)とにわけ、両群とも4回ずつ検査を実施した。さらに、A群を発症から90日までの群(14例、平均57日・中央値55日)と90日以降の群(11例、平均133日・中央値124日)とにわけ、3週間の得点の変化をStudent’s t-testで比較した。また、B群の値から、2週間ごとに6週間の経時変化をウィルコクソン符号順位検定を用いて比較した。なお、危険率5%未満を有意水準とした。
【結果】
A群では3週間で10.2±5.8から12.7±6.3と有意な改善が認められた(p<0.05)。なお、発症から90日までの群は2.9±3.2点の変化で、発症から90日以降の群は2.1±3.2点と両群の間に有意な差は認められなかった(p>0.05)。B群でも6週間で10.4±6.7から13.1±6.5と有意な改善が認められ(p<0.05)、最初の2週間は1.3±1.7点、最後の2週間は0.7±1.2点の変化であった。なお、47人の対象者のうち29人(61.7%)で得点の改善がみられた。
【結論】
本研究の対象者は発症から19~236日とばらつきはあるが、対象者の61.7%で体幹機能の改善がみられた。但し、発症から90日までの群と90日以降の群とでは得点の変化に有意な差が認められなかったことから、パフォーマンステストによる体幹機能の変化は、発症時期と単純な関係にないことが示された。その背景には、疾病の経過とともに理学療法の介入内容の違いなどが包含されており、さらに詳細な検討が必要である。FACTは体幹機能の多側面を評価するもので、経時変化を検討する際にも有用な一指標となる可能性が示唆された。