理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 382
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神経系理学療法
回復期リハビリテーション病棟における歩行獲得に向けてのアプローチ
病棟歩行の現状と効果
*畦地 一郎松村 文雄小笠原 正
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抄録
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟(以下、回復期リハ)では、ADLの自立に向け種々のスタッフが一丸となったチームアプローチが重要である。又、生活空間である病棟の中で、早期に歩行を獲得させる事は、病棟ADL獲得の大きな要因であると考える。そこで今回、脳卒中患者を対象として、病棟歩行の開始時期、病棟歩行開始時の歩行能力、実施内容等について調査したので報告する。
【対象・調査項目】
平成15年7月1日現在、当院入院中の脳卒中患者のうち、病棟で看護スタッフが監視または一部介助で歩行に関わった脳卒中患者53例(平均年齢:68.2±14歳)を対象とした。診療録より入院日、退院日、退院先、病棟歩行の開始日、自立日、内容、導入目的、歩行能力として、介助量、歩行補助具(杖、装具)を調査した。
【結果及び考察】
対象53例の病棟歩行導入までの期間は、入院から平均28.3±27.4日であった。その内、入院直後から歩行を行っていたものは13例(24%)であった。病棟歩行導入目的は、歩行自立目的40例(75%)と全体の7割以上を占めていた。具体的には、トイレ、食堂、デイルームへの移動時など、全体の約9割が何らかのADLを目的とした移動手段として歩行が行われていた。病棟歩行導入時の歩行能力は、軽度介助、四脚杖使用が多かった。杖、装具、介助量がPT訓練と同じ状況で行なわれていたものは30例(57%)。PT訓練時と比べより安定性があり、負担の少ない状態で病棟歩行が行なわれていたものが23例(43%)であった。病棟歩行を導入し、歩行自立したものは29例(55%)、歩行導入から自立までの平均日数は45.3±43.5日であった。病棟歩行を実施した患者の約9割以上が歩行能力向上を認めた。
 以上の結果より、病棟歩行開始にあたっては、軽度介助で患者、看護スタッフにとって負担の少ない状態で行なうことが適切であると考えられた。当院での病棟歩行の多くは、生活の中に組み込まれる形で、実際に看護スタッフの監視や一部介助により行なわれていた。病棟歩行を開始するにあたって、PTは歩行能力の評価を基に看護スタッフに対して介助方法などのアドバイスを行い、更に目的や内容を共有して実施することが必要である。病棟歩行を実施することは、単に早期歩行獲得だけではなく、更には生活そのものを支援する効率的なアプローチと思われ、回復期リハにおいては特に重要と考えられた。
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© 2004 日本理学療法士協会
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