理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 412
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神経系理学療法
痙直型両麻痺一症例における補高短下肢装具の効果
*玉井 太至
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抄録
【はじめに】一般に痙性麻痺に対する装具療法は,痙性抑制装具に関する報告が多い。しかし脳性麻痺児の視点に立てば、運動機能を構築してきた結果を否定される経験は自己決定を阻害する危惧がある。そこで今回、痙直型両麻痺児一例に対し〔現在の歩容受け入れを前提に、活動を推進する〕という考えから装具を作製したので報告する。
【対象と方法】症例 診断名:脳性麻痺、痙直型両麻痺12歳男児。在胎29週、出生時体重1172g、PT開始時月齢5カ月。独歩43カ月。現在の移動手段は独歩、日常は90度後方制動縦アーチサポート付きシューホン型装具〔以下、従来型装具〕を使用。歩容は、痙性尖足歩行、クラウチング〔+〕、左側に尖足著明。装具装着時も踵接地感は乏しい。方法は、下腿三頭筋に重点を絞り補装具をデザインした。クラウチング歩行は、踵接地が不十分なため立脚期におけるスムーズな重心移動が困難であると仮定し、踵補高を自由歩行時に接地感が良好であった左3cmを基準に両側設定した。また、自由度を減少させ運動制御を容易にするという視点から両側に縦、横アーチサポート+踵骨サポートを追加した踵補高+後方制動シューホン型装具〔以下、補高型装具〕を作製した。評価は、床反力計〔アニマ社製歩行解析システム〕を用い、裸足、従来型装具、補高型装具での自由歩行を各3回実施、正規化し傾向について検討した。
【結果】補高型は、従来型より左側に効果的であった。左垂直分力からは重心移動がスムーズになり歩行スピードの向上、踏み返しが認められた。また、SD差は減少し安定性向上が認められた。前後分力においてはヒールストライクの前方への力が増した。補高型装具装着1カ月後、本児から〔体が安定し歩きやすい。踵が地面についている感じがする。〕、家族から〔ボールを投げるのが上手になった。走り方がよくなった。〕との感想を得た。補高による著明な二次的障害は、認められなかった。
【考察】今回の補高型装具は、本児が育んだ歩容をPTが受容することで尖足位のまま身体動揺の少ない安定した歩容を獲得することができた。踵接地獲得により、踏み返し活動が確認でき床接地以降に進行方向を決定出来る事から歩行自由度増大が期待できる。そのため、補高型装具装着1カ月間の運動療法において矯正を加えない自発的な自由運動を設定できた。本児の感想からは、補高型装具は活動を活性化させ、加えて家族の賞賛が意欲を増幅させた結果、能動的活動が促されると考えられる。
【まとめ】1.痙直型両麻痺児1名を対象に現状の身体機能を受け入れた形状の短下肢装具を作製した。2.クラウチング歩行に対し、縦、横アーチサポート+踵骨サポート付き踵補高+後方制動ポリプロピレン製シューホン型装具は、従来型に比べ良好な結果を得た。3.補高型装具は、自己決定に基づく能動的活動を得るための援助の可能性を有することが示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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