理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 413
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神経系理学療法
痙直型四肢麻痺児一症例の入園中の粗大運動能力変化
GMFM-66のItem Mapを用いた治療例の紹介
*平井 真由美鶴田 ゆかり藪中 良彦平井 智香横川 恵美吉田 真司河中 誉真
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抄録

【はじめに】痙直型四肢麻痺児一症例に対して、入園直後から入園中の粗大運動能力変化を経時的に評価した。その結果とともに、入園中の治療方針の立案や入園成果の確認などでの評価法の利用について考察をふまえて報告する。
【対象】入園時年齢9歳0カ月の男児。粗大運動能力分類システムGMFCSレベル4。当園にて乳児期から治療を継続していた。その間、5歳時に入園し股関節整復術を施行した。今回の入園は2003年5月から8カ月間で手術は施行されず、母親のニーズである手すりを用いて階段を昇る時の介助量軽減が目標であった。入園中は、週4日の個別理学療法と週1日の集団理学療法を各40分施行した。
【方法】粗大運動能力評価として、入園直後から1カ月ごとにGMFM-88を測定し、GMFM-66得点を算出、Item Mapを作成した。Item Mapより、入園期間中の子どもの粗大運動能力における課題と変化を明確にし、治療への利用を検討した。
【結果】入園直後から7カ月目の現在までの途中経過を示す。
GMFM-88の総合点の変化は、入園直後は53.90%で現在は5.32%増加した。一番変化したのは四つ這いと膝立ち(以下C)領域で、入園直後に比べ14.29%増加した。
GMFM-66得点は、入園直後が47.68±1.11、現在は50.32±1.17であり、入園中の変化に有意差はなかった。
入園直後のItem Mapで95%信頼区間の下限に近い得点だったのは、座位領域1項目、C領域「四つ這いから座位になる」「膝歩き」など4項目、D領域「つかまり立ちで右足を上げる」など2項目、E領域「両手介助歩行」など3項目で、臨床的にも変化が期待できると思われた。「手すりにつかまって階段を昇る」の得点は0点で、95%信頼区間から遙かに高い機能のため向上は期待できないと思われた。これらの項目を参照し、目標である階段を昇る介助量軽減に結びつくと思われた、膝立ちと伝い歩きを短期目標に設定した。
現在、変化が期待された項目のうちC、D領域各1項目以外の得点は向上し、ばらつきが減少しGMFM-66得点が増加した。95%信頼区間の上限を越えて大きく向上した項目は「手すりにつかまって階段を昇る」だった。
【考察】今回、Item Mapを用いて変化する余地がある項目を分析し、臨床像と照らし合わせて治療目標の設定とその妥当性を検討できた。このことは、治療方針の立案や治療成果の確認をする上で参考になった。
母親のニーズに近い「手すりにつかまって階段を昇る」は、Item Mapを参照すると高すぎる機能だったが、家庭環境を考慮し階段の介助量軽減に目標を設定した。現在、「手すりにつかまって階段を昇る」に95%信頼区間の上限を越えて大きく向上が見られたことは、治療成果が反映されたと考える。しかし、今後の体重増加などにより機能低下が予測され、今後は転居など環境調整の必要があると考える。

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© 2004 日本理学療法士協会
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