抄録
【はじめに】自発的に座位姿勢を保持することが困難な児に対し、治療場面・ADLで姿勢保持用具による座位姿勢の経験は重要で、臨床でそれらの検討は児の発達と共に常に試行錯誤の毎日であることを、小児セラピストなら痛感していることと思う。特に呼吸や嚥下に問題を持つ児は、従来のティルト型座位保持装置(以下T/S)では安楽で安定した姿勢を保持することの難しさを経験している。今回、体幹前傾前受け座位姿勢保持具Rider Chair(以下R/C)を5例の児に作製・使用してもらい、若干の問題改善を確認できたので考察を加え紹介する。
【対象】当センター入所児1名、通所児4名。内訳は脳性麻痺児3名、脳梗塞後遺症児1名、先天性ミオパシー疑い児1名で、2歳~7歳 平均4.6歳。全対象児に共通する障害として、慢性呼吸障害・嚥下障害(経管栄養)・痙性伸展過緊張に伴う“反り返り姿勢”がある。
【座位保持具の紹介】T/Sは、児の体型を採寸・採型した座面・バックレストに背もたれて背面・座面で荷重を受け、ティルトで荷重負荷面を変化させて姿勢を調節する。R/Cは、ウレタンスポンジブロックを取らせたい姿勢アライメントに削りだして作製、跨って体幹前傾前持たれで体幹前面・跨り座面より荷重を受け、三角マットを底部に敷き込み全体的に角度を変化させて姿勢を調節する。
【結果及び考察】保護者・療育スタッフへのインタビューよりT/SとR/Cを比較検討した。T/Sの利点としては、変形の状態に合わせて良肢位が得られやすい。サポートが強く体幹伸展位保持が得られやすい。欠点としては背面方向へティルトを利用するため、頭頸部の短縮後傾で開口位になりやすく、下顎後退で舌根沈下を助長しやすくなる。誤嚥や排痰困難、上気道閉塞により、姿勢の伸展過緊張→反り返りを誘発しやすい。R/Cの利点としては、姿勢の伸展過緊張が抑えられ、リラックスした筋緊張で安定した姿勢が得られた。このことで頭頸部が前屈し下顎後退が改善され、下顎・舌の運動性が向上し、呼吸が安楽になり、唾液・痰の自然排出が促せ、誤嚥によると思われる咳嗽が減少、それらの相乗効果として姿勢の反り返りが減少した。欠点としては、脊柱側彎や円背のコントロールが十分行えない、跨る姿勢のため股関節に障害があると長時間の姿勢保持は困難、という共通意見を得た。近年、発達障害児の中でもこれらに問題を抱える重度児が増加傾向にあり、このような児の日々のADLの中であらゆる抗重力姿勢を保持し経験していくことは重要であり、姿勢を決めていく上で安楽であることのサインとして、呼吸や嚥下は重要なポイントである。今回科学的エビデンスとして、SpO2の改善を統計的に確認したり、V-F検査による誤嚥の消失を確認することはできなかった。今後は更なる有用性の立証を行っていきたい。