理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 425
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神経系理学療法
インフルエンザ脳症により運動失調を呈した一症例
*今井 保下之園 英明松山 博文加藤 裕子杉原 建介御勢 真一
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抄録
【はじめに】インフルエンザ脳症は、年間100~300人の小児(6歳以下)に発症し、障害を残さず回復する症例は約半数と言われ、その障害像は、知能低下、運動麻痺、てんかん、嚥下障害とさまざまである。今回、インフルエンザ脳症に罹患し、重篤な運動失調症状を呈した症例を経験したので報告する。
【症例紹介】症例は年齢3才、性別女性、2003年1月4日インフルエンザ発症。1月6日意識レベル低下(3-3-9度方式3桁)が認められ、1月8日当院小児科入院。
【経過】2003年1月16日ベッドサイドにて理学療法開始。
(初期評価)意識:3-3-9度方式で1桁レベル。運動能力:上下肢は自力にて運動可能。上下肢とも失調性の運動が認められる。発語:「帰りたい」などの認められるも、失調性構音障害のため聞き取り困難。基本動作:頸定みられず寝返りも困難なレベル。ROM:問題なし。筋トーヌス:全身的に低い。訓練内容:1) 寝返り介助訓練、2) 頸定目的での坐位訓練、3)上肢のリーチ動作訓練
(初期評価後の経過)同年1月21日より訓練室での理学療法が開始となる。頸部の安定性が向上し、長坐位が軽介助にて可能となったため、1月22日より訓練プログラムにバルーンを用いた立位訓練を追加した。内容はバルーン上に両手をつき、両膝が過伸展しないようにセラピストが介助しながらの立位訓練とした。この頃より発語が明瞭になり、頸部の安定性もさらに向上した。1月29日マット上での寝返りから起き上がり、長坐位保持が可能となる。また四肢の筋力低下が改善し、それに伴い運動失調も軽減した。2月12日不安定ながらも独歩(要監視)2~3歩可能となる。2月22日内科的に安定したため退院となる。2月24日外来(2回/週)での理学療法開始。2月28日歩行の持久性を高める目的で歩行器での歩行訓練開始(150m)。3月5日30m独歩(要監視)可能レベルとなる。3月14日階段昇降開始。手すりを持てば監視レベルで可能。4月10日幼稚園入園。しゃがみこみとジャンプは困難。5月1日歩行スピードの評価:30m52秒、7月22日小走り可能。長距離の歩行も可能。歩行スピード:30m30秒、階段はやや困難。
(11月11日現在の評価)しゃがみこみ可能、ジャンプ可能、階段可能。歩行スピード:30m23秒。
【考察およびまとめ】インフルエンザ脳症は脳炎とは異なり、脳浮腫による脳損傷が症状の原因である。それゆえ脳浮腫の部位程度やその期間により様々な症状を呈する。一般的に若年の脳細胞は可塑性が高く、初期症状が重度であってもその回復の可能性は高いと考えられる。今回の症例も初期には重度の意識障害を呈していたが、現在は普通児と同じ内容の教育が受けられるレベルにまで回復した。この症例を通じ理学療法の基本である二次障害の予防が、いかに重要であるか再認識した。
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© 2004 日本理学療法士協会
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