抄録
【はじめに】救急指定病院である当院は、緊急手術後のくも膜下出血(以下SAH)患者が多く入院している。Spasm期終了後から自宅退院を目指し、ベッドサイドで車椅子座位訓練を開始している。意識障害が遷延する例に対しても、車椅子座位時間を一日3 時間以上実施し、介助による立ち上がり訓練を積極的に行なっている。さらに、早期から家族を訓練に参加させ、介助法の指導も行なっている。意識障害が遷延する場合が多いSAH患者の退院時Glasgow Coma Scale(以下GCS)と機能的自立度評価法(以下FIM)の関連と、FIM運動項目得点(以下mFIM),FIM認知項目得点(以下cFIM)が退院先決定にどのように反映しているかを比較・検討した。
【対象】平成14年8月~15年3月に入院したSAH患者33例(男11,女22)で、年齢は62.5±11.0歳であった。重症度は国際脳神経外科学会連合分類でgrade1:8,2:11,3:2,4:9,5:3例であった。手術方法はコイル塞栓術が19例、開頭クリッピング術が11例、前者2手術を同日に施行した例が3例であった。
【方法】横軸に退院時GCS、縦軸に退院時FIMの得点をとり、散布図を作成した。自宅退院群と転院群に分け、判別分析を用いて線形判別関数を導き、比較・検討した。
【結果】自宅退院群15例ではGCS 14.9±0.26、FIM合計点(以下tFIM)110.4±7.1、mFIM 76.1±6.7、cFIM34.4±1.1であった。転院群18例ではGCS 13.3±1.6、tFIM 49.1±34.4、mFIM 33.0±23.6、cFIM 16.1±11.3であった。自宅退院群では退院時GCSが15点となるとtFIMも高得点となっていた。同群のcFIMではほぼ満点を獲得して、自宅退院としていた。線型判別関数はtFIMではz=0.67x+0.09y-16.4、mFIMではz=0.43x+0.13y-13.2で、cFIMではz=-1.23x+0.42y+6.7となった。z>0の時に自宅退院、z<0では転院と判別された。判別分析で合致しなかった6例はz>0であるが家族の協力や家屋環境が不十分であったため転院となっていた。
【考察】SAH患者は脳梗塞・脳出血患者に比べ局所神経症状は軽度で、意識障害が残存しなければ身体機能の向上も期待できるとされている。今回の結果より、意識障害が軽度でcFIMが高得点であれば、ADLが完全に自立しなくても自宅退院していることが分かった。意識二桁の時期から早くADLの獲得を行なった事と、早期から介助法を家族指導した事が自宅退院に役立っていると思われた。意識障害が残存しADLに介助を要する状態でも自宅退院するには、監視が外せないため家族の協力が必要である。家族指導や家屋整備をさらに早期に実施していくつもりである。