理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 434
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神経系理学療法
FIM認知項目がリハビリテーション効果に及ぼす影響
FIM運動項目による重症度分類を踏まえて
*中島 由美恵荒尾 雅文稲川 賢木野田 典保水野 智明宮下 有紀子
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抄録
【目的】当院では平成13年11月に回復期リハビリテーション病棟(1病棟60床)を開設,次いで平成14年10月に1病棟40床を設置し,現在2病棟100床を有している.当院ではより効率的なリハを展開する目的でFIMによる重症度分類を試み,その有用性については昨年荒尾らが報告した.今回はその分類を発展させ臨床現場でより実践的に活用できるように,FIMを運動項目(以下運動FIM)と認知項目(以下認知FIM)に分け,本論では認知FIMがリハ効果に及ぼす影響を検討した.
【方法】対象は平成14年4月~平成15年10月の間に当院回復期リハ病棟を退院した脳血管障害患者230名(男性118名,女性112名).平均年齢71.5±11.1歳.疾患内訳は脳梗塞138名,脳出血66名,その他26名.麻痺側は右88名,左108名,両側17名,明らかな麻痺なし17名.方法は対象を開始時の運動FIMから3群(重度群<39点,中等度群<78点,軽度群)に分類し,各群内で開始時の認知FIMから更に2群(低群<25点,高群)に分けた.3群内の認知低・高群間で運動FIM利得(開始時と退院時の差),認知FIM利得,自宅退院率(以下自宅率)および歩行自立率(以下歩行率)を比較した.運動・認知の各FIM利得についてはMann-WhitneyのU検定を,自宅率と歩行率はFisherの直接法を用いてそれぞれ5%を有意水準とし,統計処理を行った.
【結果】a)分類:重度群(以下重)96名(以下,認知低群/高群と示す.86名/10名),中等度群(以下中)107名(52名/55名),軽度群(以下軽)27名(4名/23名).b)運動FIM利得,認知FIM利得:3群とも認知低群と高群間で有意差は見られなかった.c)自宅率: (重)24%/60%(中)65%/87%(軽)50%/96%.3群とも認知低群と高群間で有意差が見られた(重:p=0.027,中:p=0.011,軽:p=0.049).d)歩行率:(重)5%/10%(中)24%/51%(軽)75%/91%.歩行率は中等度群で有意差が見られた(中:p=0.005).
【考察】今回の結果より3群の認知低群と高群間のすべてで自宅率に差が見られた.これは開始時にはほぼ同じADL能力を有する患者でも開始時の認知FIMが低値であると自宅退院が阻害される可能性があることを示す.また歩行率の結果は開始時の認知FIMが中等度群の自立歩行の獲得に影響することを示している.重度群や軽度群と異なり中等度群には認知低・高者がほぼ半数ずつ存在するため,中等度群の回復度は認知機能の影響を受け易く,ADL能力の到達点や歩行自立の可否等の予測が難しい群と言える.このことが中等度群の回復に幅を生む一因になっているのではないか.よって中等度群は特に回復の柔軟性に富む群という認識のもと今後は認知FIMを予後予測の一指標と捉え,より適切なリハを展開していきたい.また将来的にはクリニカルパスの導入時にアウトカムを設定する際の一助としていきたい.
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© 2004 日本理学療法士協会
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