理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 445
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神経系理学療法
脳血管障害患者における体幹機能障害が呼吸機能へ及ぼす影響
*新谷 和文末木 恒治荻野 久美寺垣 康裕氷見 昌美入内島 弘太臼田 滋内山 靖
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抄録
【目的】脳血管障害(以下CVD)では上下肢の麻痺に加え体幹機能が低下し、日常生活活動に種々の影響を与えている。また、体幹は呼吸運動と密接な関係があり、体幹機能障害がCVD後片麻痺患者にみられる拘束性呼吸障害の一要因となっている。
 そこで本研究は、体幹機能を構成するアライメント・可動性、筋力、協調性などの各要素機能を計測し、CVD患者における体幹機能障害が呼吸機能にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的とする。
【方法】対象は、端座位保持可能なCVD患者42名(平均年齢67.8±11.7歳)で、呼吸器疾患の既往、高次神経機能障害、疼痛により後述する検査課題が遂行困難な者は対象から除外した。
 検査課題は、自動的・他動的脊柱可動性(花田らの方法)、脊柱アライメント(寺垣らの円背指数を算出)、胸郭可動性(第10肋骨レベルの拡張差)、筋力(屈曲、伸展、側屈曲:Bohannonらの方法)、横隔膜筋力(Hislopらの方法を改変)、垂直性(SIASの検査項目)、視覚性立ち直り反応、Chedoke McMaster Stroke Assessment Postural Control Test(以下CMステージ)の14項目を計測した。また、呼吸機能はスパイロメータ(フクダ電子製)を用い肺活量(以下VC)および呼吸筋筋力(最大呼気圧、最大吸気圧)を計測した。
 まず各指標の計測再現性を検証し、計測結果を相互に比較した。また、拘束性呼吸障害の有無で各要素機能のt検定、マン・ホイットニ検定を行い、あわせて、%VCを目的変数とするステップワイズ重回帰分析も行った。
【結果および考察】14項目の計測の再現性は、検者内再現性の級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient :ICC)はr=0.89-0.98、検者間再現性のICCはr=0.86-0.98であり、VCの平均は2.5±0.8(l)で、42名中、16名(38.1%)が拘束性呼吸障害を示した。
 %VCとCMステージの間にはr=0.72(p<0.01)、%VCと体幹機能構成要素14項目との間にはr=-0.44~0.71(p<0.01)の相関を認めた。また、各14項目を拘束性障害の有無で2群に分けた群間の平均の差でも、全ての項目で有意差(p<0.01)を認め、体幹機能障害はCVD患者の呼吸機能に影響を及ぼしていた。
 %VCを目的変数とする重回帰式は %VC=0.31×(自動脊柱可動性)+0.27×(最大吸気圧)+0.29×(視覚性立ち直り反応の左右の合計)+52.46で、R2=0.56であった。拘束性呼吸障害は脊柱の可動性、吸気筋力、立ち直り反応が重要であった。
【結論】CVD患者の体幹機能障害は日常生活活動とともに呼吸機能にも影響を与え、自動可動性、筋力、協調性と密接な関係が示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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