抄録
【目的】我々は、第38回本学会において、脳卒中片麻痺患者に対し端坐位で実施できる移動能力評価法として2m側方移動時間(以下2LMT)を考案し、その特徴と臨床における有用性について報告した。そこで今回は、2LMTと片麻痺患者における歩行自立度との関連について検討することを目的とした。
【対象】対象は、当施設に入所、またはTセンターリハビリテーション科に入院し、理学療法を施行した脳卒中片麻痺患者のうち、半側無視・痴呆などの合併症がなく指示理解が良好であり、且つ本研究への賛同が得られた72例(平均年齢72±8歳、男性42名・女性30名)とした。
【方法】調査項目は、年齢、性別、下肢Brunnstrom-stage(以下Br-stage)、非麻痺側握力、2LMT非麻痺側、2LMT麻痺側とした。歩行自立度との関連を検討するため、歩行自立の有無にダミー変数(0・1)をあて、調査項目との相関を求めた。次に、有意であった項目を独立変数、歩行自立を従属変数としたロジスティックモデルを作成し、歩行自立の判別を行った。検定は相関係数とロジスティック回帰分析を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】(1)歩行自立との相関をみると、年齢(R=0.052 p=0.664)、性別(R=0.039 p=0.742)、Br-stage(R=0.543 p<0.01)非麻痺側握力(R=0.281 p=0.051)、2LMT非麻痺側(R=0.433 p<0.01)、2LMT麻痺側(R=0.539 p<0.01)であり、Br-stageと2LMT非麻痺側・2LMT麻痺側が有意であった。
(2)ロジスティック回帰分析の結果、2LMT非麻痺側(係数=-0.62オッズ比=0.54 p<0.01)とBr-stage(係数=0.89 オッズ比=2.43 p<0.05)が歩行自立を規定する因子として抽出された。ここからロジスティックモデルを作成し歩行自立の判別を行ったところ、感度=0.72、特異度=0.85、適中精度=0.81であった(R2=0.410 p<0.01)。また、2LMT非麻痺側と2LMT麻痺側を用いたモデルを作成してみると、実数よりも2LMT非麻痺側は7秒、2LMT麻痺側は12秒で分類したほうがあてはまりが良く、感度=0.81、特異度=0.80、適中精度=0.81であった(R2=0.349 p<0.01)。
【考察】今回の結果から、2LMTは非麻痺側・麻痺側とも、歩行自立度との相関が高く、歩行能力との高い関連性を示していた。また、歩行自立の判別にも有用と考えられ、非麻痺側は7秒、麻痺側は12秒をひとつの目安とし、歩行自立の予測として使用できる可能性を示唆している。この2LMTは、脳卒中片麻痺患者の移動能力評価だけではなく、歩行の予測にも使用できる臨床的な評価法であると考えられた。