抄録
【はじめに】Churg-Strauss症候群(以下CSS)は、気管支喘息の既往、末梢血中好酸球増加と血管炎症候群を特徴とする疾患である。神経症候として、多発性単神経炎を呈することが多く、運動障害が出現する例も多く理学療法(以下PT)が必要であるが、PT内容や機能予後に関する報告は散見されるのみである。今回、当院に入院し、PTを施行した3症例について報告する。
【症例】症例1(55歳・女性):48歳時に気管支喘息と診断。55歳時に感覚低下と筋脱力出現。当院でCSSと診断され、約1ヶ月間のPT後に転院した。開始時は異常感覚が四肢遠位に存在し、下肢遠位優位の筋力低下(足部筋力0~1)により歩行が不可能であった。退院時には股・膝周囲の下肢筋力は改善したが、足部筋力は著変がなかった。歩行は下肢装具(右AFO、左KAFO)での歩行器歩行が可能となった。診断確定1年後に左下肢に感覚障害は残るが、足部筋力が改善し、装具なしでのロフストランド杖歩行が可能となった。症例2(63歳・男性):52歳時に気管支喘息と診断。63歳時に発熱継続し、他院入院。入院後、右下垂手と感覚障害、歩行困難が出現し、CSSと診断された。初期治療後に当院転院、約3ヶ月間のPT後に退院した。開始時は感覚鈍麻を右手・両足部周囲に認めた。下肢遠位優位の筋力低下(足部筋力2-~3-)により病室内歩行レベルであった。退院時には右下肢筋力は改善し、左足部の筋力低下が残ったが、左AFOでの歩行が可能となった。診断確定9ヶ月経過時には左足部筋力の著明な変化はないが、実用的な歩行能力は維持されている。症例3(55歳・男性):53歳時に気管支喘息と診断。54歳頃から喘息発作を繰り返し、両下肢遠位部の筋力低下、異常感覚が出現。近医で内科治療を開始したものの、両松葉歩行レベルであった。55歳時に当院でCSSと診断され、約1ヶ月間のPT後に退院した。開始時は下肢遠位の異常感覚と下肢筋力低下(足部筋力2~2+)及び尖足が存在し、両松葉杖歩行レベルであった。退院時には下肢筋力は不変であったが、尖足が改善し、両松葉杖歩行が安定した。診断確定1年後では、好酸球値の高値を示し、下肢筋力にも変化なく、歩行能力も変化なかった。
【考察】CSS 3症例のうち、病状の安定した2症例では機能回復を示し、実用的な歩行能力を獲得することが出来た。初期には装具が必要であったが、長期的には不要となる症例も存在した。これらの結果を踏まえ、早期のPT施行時には機能レベルに応じた装具を作成し、診断確定後も、回復が長期に渡るため、継続的にPTが関与していくことが歩行能力の再獲得には必要であると考えられる。CSS症例に対するPT実施に際しては、単神経炎の回復と装具の作成時期を考慮し、PTを進めることが重要である。