理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 456
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神経系理学療法
Verbal commandによる変化について
脳卒中右片麻痺患者2症例における比較
*安里 和也仲田 多津子小川 晃生泉水 朝貴川端 哲弥又吉 みどり松浦 淳子平良 進比嘉 裕
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抄録

【目的】治療の一手段として、患者に対し様々な口頭指示を行い展開していく事も少なくない。今回、「足を擦らないで歩きたい」という理学療法needを持った2症例に対し、Verbal command(以下VC)を用いて治療を行った。それに対し、足を擦らないで歩くという同様の結果は得られたが、満足度に差異が生じた。この2症例の動きを分析し、満足度の違いについて検討したのでここに報告する。
【対象と方法】主旨を十分に説明し同意の得られた、脳卒中右片麻痺患者2例(A:67歳・男性・平成15年6月発症、B:66歳・男性・平成8年5月発症)を対象とした。2例に対し、3種類のVC後に歩いてもらい、それを前額面後方よりデジタルビデオカメラにて撮影した。その撮影した静止画像を画像解析ソフトScion Imageにて解析した。VCは、(1)「普通に歩いてください」(2)「足を擦らないように歩いて下さい」(3)「反対側に寄り掛かるように歩いて下さい」とした。分析の時期は、麻痺側の床離地期、遊脚中期、床接地期とした。マーキングは、隆椎、第9胸椎、第1腰椎、両大転子、左踵部に行った。分析方法は、a.第9胸椎以上の傾斜角(以下a)、b.胸腰椎部の傾斜角(以下b)、c.骨盤傾斜角(以下c)、d.下肢傾斜角を求め、2例の動きの比較を行った。
【結果】2症例ともVCにて(2)、(3)では足を擦らなくなった。満足度では、症例Aは満足が得られたが、症例Bでは満足は得られなかった。動きの分析において症例Aでは、(1)~(3)において麻痺側遊脚期全般でa・bで床面からの垂線より麻痺側へ傾斜する事は殆どみられなかった。cにおいても右骨盤が水平線より下制する動きは全くみられなかった。症例Bでは、(1)~(3)において麻痺側遊脚期全般でa・bとも麻痺側・非麻痺側へ傾斜する動きがみられ、骨盤も水平線を境として挙上・下制の動きがみられた。
【考察】症例Aでは、骨盤を含む体幹での対応は少なく足部での対応が多く用いられていると考えられ、対応能力の低さが伺えた。しかし、満足度は高かった。これは、症例Aは入院中の患者であり、「家へ帰りたい」という大きな目標があり、今回退院が近づいているという事で満足度が得られたのではないかと推察された。症例Bでは、骨盤を含む体幹・股関節での多様な対応を行っていると考えられ、動きの多様性という面からみると対応能力の高さが伺えた。しかし、症例Bの満足度が低かった。これは、症例Bは発症から7年経過した現在も外来にて理学療法を継続しており、理学療法への依存が伺え、治療から逸脱している可能性が示唆された。それにより満足度に反映されにくいのではないかと考えられた。よって医者との連携等の必要性も示唆された。
【終わりに】患者の満足度は、理学療法のみではなく、それ以外の要素も関係してくる事が考えられた。

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© 2004 日本理学療法士協会
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