理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 458
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神経系理学療法
成人片麻痺者の身体スケーリングの継時的変化
*豊田 平介西澤 要黒澤 和生
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抄録
【はじめに】
 私達は日常の生活の中で環境の特性を知覚しているだけではなく,自己についての特性をも同時的に参照した情報を知覚している。今回,間隙の通過能力を利用し成人片麻痺者(以下片麻痺者)が歩行の獲得に伴う身体スケーリングの変化を経時的に測定し,考察を加えてここに報告する。
【方法】
 対象は成人片麻痺者1名,年齢74歳,診断名:脳梗塞(被殻梗塞)左片麻痺。測定は発症より4週経過した時点から行った。この時点ではBrs stage上肢5,下肢5,手指5であった。また高次神経機能障害,痴呆を伴わない測定内容が理解可能であった。身体の特性として肩幅(以下WS),目の高さ(以下EL)を計測した。実験の装置はポリエチレン製の平面板を4枚用いて壁を作り間隙を設定した。間隙は35cm~80cmまで5cm間隔に設定した。手順として視覚的判断(以下VG)と実際に間隙を通過(以下PA)するのと二つの測定を行なった。VGは間隙を正面にしてEL×2の距離を観察点として間隙が肩を回さずに通れるかどうかをできる,できないの二件法にて判断した。PAは5m離れたところから通過してもらった。そして肩を回さないで通過したところを変換点として値をとった。分析方法はWarren,W.Hの方法を用い,間隙の幅をAとするとπ=A/SWとしπ数を算出した。片麻痺者の歩行が可能となった時点から歩行が自立(独歩可能な状態)までの間に5回測定を行い,それぞれの時期で比較を行なった。また10m歩行スピードと歩数を計測した。
【結果】
 VGの平均は1回目=1.19±0.07,2回目=1.37±0.06,3回目=1.16±0.09,4回目=1.25±0.06,5回目=1.28±0.05であった。VGの変動係数(以下CV)は1回目=0.06,2回目=0.04,3回目=0.08,4回目=0.05,5回目=0.04であった。PAは1回目=1.44,2回目=1.57,3回目=1.71,4回目=1.57,5回目=1.44であった。10m歩行スピードと歩数は1回目8.02秒・12歩,3回目7.44秒・12歩,5回目6.70秒・11歩であった。
【考察】
 歩行が可能になることは身体において安定性の向上が必要となる。それは歩行スピードや歩数の経時的変化からも分かる。VGは最初に幅を広く見積り,徐々に低下していくものと考えられた。またPAも同じような経過をたどるものと思われた。しかし実際はVGでは3回目の時点で一番少ない幅を知覚し,逆にPAでは一番大きい幅を知覚している。徐々に歩行も可能になっている時期にVGとPAの間では乖離した状態が観察された。またCVにおいても3回目のところで大きくなり,徐々に低くなっていった。これはVGにおいて3回目の時点で特に変動が大きいことがあり,歩行スピードは向上し,身体の安定性も向上してはいるが,知覚自体は極めて不安定な状態にあると考えられる。今回の片麻痺者の身体と知覚において経時的変化の中で乖離する時期があることが分かった。
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© 2004 日本理学療法士協会
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