理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 460
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神経系理学療法
脳血管障害者のリハビリテーションと動脈硬化の関連性
*瀬戸口 佳史山口 賢中島 浩一岡崎 智治松本 秀也中島 洋明大勝 洋祐
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キーワード: 脳血管障害, PWV, ADL
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抄録
【目的】最近では、痛みや苦痛を伴わず短時間で動脈壁の硬さを評価する脈波伝播速度PWVの検査が普及し簡易に行われるようになった。今回我々は、脳血管障害発症時にPWVを測定し、ADLの経過が観察可能であった94症例を対象に、発症時のPWVがADLの改善に影響を与えるのか、また数例に対してはリハビリテーションの効果がPWVに変動を与えるのかを検討したので報告する。
【対象】対象は、平成12年4月から平成15年4月までに当院に入院し、理学療法を施行後退院した脳血管障害94例で、発症当初のPWVの測定とFIMによる経過観察が可能であった者とした。内訳はアテローム血栓性脳梗塞53例、脳出血21例、心原性脳塞栓11例、ラクナ梗塞9例、右片麻痺47例、左片麻痺47例、平均年齢72才であった。
【方法】PWVの測定は日本コーリン社製formPWV/ABIを用い、上下肢動脈間の距離と拍動の到達所要時間より算出した。PWVは、+1SD値より高値をhiPWV群、低値をlowPWV群とし二群間でのIM運動得点の推移、歩行能力について比較検討した。また、PWVの経過観察可能であった9例に対してはPWVの推移とFIM運動得点推移の関連性についても検討を行い、ADL自立度の変化が血管弾力性に影響を与えているのかについても検討をおこなった。
【結果】1.FIM運動得点推移:hiPWV群初期時平均48.5、最終時59.8、lowPWV群初期時55.8、最終時66.5で二群間のADL改善に差は認められなかった。2.歩行能力:初期時、hiPWV群不可42%、介助22%、監視5%、自立27%、lowPWV群不可25%、介助23%、監視26%、自立26%で発症時PWV値の高い者の歩行能力が低い傾向を示し、最終時hiPWV群不可29%、介助14%、監視15%、自立42%、lowPWV群不可17%、介助20%、監視14%、自立48%で二群間に差は認められなかった。3.PWV・FIM運動得点の推移が観察可能であった9例中4例がFIMの改善に伴いPWV値は下降し、4例がFIMの低下に伴いPWV値も上昇し、ADL能力が動脈壁の弾力性に影響を与えている結果を示した。
【考察】動脈硬化は血管壁の肥厚と内腔の狭窄、血管の弾力性の低下を2大要素とし、従来では非可逆的変化とみなされており、特にリハビリテーションとの関連性について検討された報告は少ない。しかし最近では、血管内皮より生成されるNO(一酸化窒素)が血管拡張性に働くほか、平滑筋増殖抑制、白血球接着抑制、活性酸素生産抑制などの作用を有し動脈硬化は予防しうるばかりか改善させることも可能であることが判明されてきた。今回の結果では、発症時のPWVが高値である者は歩行能力が低い傾向にあるが、ADLや歩行能力の改善に影響はなく、ADLの改善すなわち日常の活動性の向上がPWVを低下させ血管の弾力性を改善させるという興味深い結果を得た。これはNO不応性の改善に伴う内皮細胞機能障害の改善がPWV値の低下に好影響を与えたものと推測される。
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© 2004 日本理学療法士協会
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