抄録
【はじめに】当科では1972年より週一回発達クリニック外来を設けて早期療育に取り組み,その効果は本学会においても報告してきた。横浜市は1987年10月より療育システムを整備し、0歳から未就学の障害児については各地域療育センターで療育を行なうことになっている。しかし近年医学的管理を含めたリハビリテーション(以下リハと略す)を希望し、就学後当科を再診・治療開始となる学童児が増えている。今回、発達クリニック対象児を再調査し、その動向、治療内容等を調査・検討したので報告する。
【対象】1996年4月から2003年10月までに当科発達クリニックで継続して3ヶ月以上治療を行なった46名。開始時年齢は平均5歳9ヶ月,訓練期間は平均1年11ヶ月であった。これら対象児の年齢、診断名、紹介経路、転帰、理学療法(以下PTと略す)の内容等について診療録より抽出した。
【結果】各年度別の対象児年齢では、96年度は未就学児5名学童児0名に対し,03年度は6名/21名と学童児が急増していた。PT開始時の年齢は小学生が16名と最も多く、次いで0歳児11名であった。当科へは、3歳未満の乳幼児は院内他科からの併診が多く、小学生以上では療育センターや他院からの紹介、直接当科を受診する例が多かった。診断名は脳性麻痺を含む先天性脳障害が半数以上を占めていた。46名のうち地域療育センターを含む他施設へ移行した者が6名,機能改善により終了又は医師のフォローアップのみとなった者が8名、転居や入院加療等により中断した者が6名であった。現在も継続している26名は小学生が14名で半数以上を占め、6歳未満の幼児は8名で、0歳児はいなかった。これら26名の治療内容は、未就学児は発達段階に応じたアプローチを中心に、学童児はすでに獲得されている運動機能の維持・向上、成長に伴う筋緊張の異常や変形に対する予防的な関わりが多くみられた。筋・腱の延長等術後の症例は、術後理学療法として運動の再学習を目的に、効率的な機能獲得に向けたアプローチを行った。家族指導は全症例に行われ、未就学児には抱き方の指導に始まり遊びや食事など家庭生活レベルでの指導を、学童児へは学校行事の参加方法や、校内移動手段の確認など学校生活レベルでの指導が多くみられた。
【考察及びまとめ】従来の発達クリニックの対象である未就学児は23%に留まり、早期療育は継続されていたが全体数は減少していた。これは療育システムが整い、大学病院が担うべき役割が変化してきたためと考える。逆に増加傾向にある学童児は、就学と共に医療的ケアを受ける機会が少なくなり、保護者の不安が高まっているためではないかと考えられる。医療の発達に伴い重度心身障害児の生命予後は改善され、学童期の障害児のリハニーズは高まることが予想される。大学病院に限らず各医療機関でも、学童期の障害児のリハを受け入れる必要性がうかがえた。