理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 542
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神経系理学療法
新生児期の神経学的評価スコア(Dubowitz改訂版)によるフォローの判断基準の検討
*烏山 亜紀藤本 一清福原 理恵木原 裕貴河村 光俊奈良 勲
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抄録
【目的】新生児の神経学的評価として一般的に用いられているDubowitzの神経学的評価が1998年に改訂され、低リスクの満期産児224人の評価結果をもとに、スコアリングシステムが作成され、結果の得点化が可能となっている。改訂された評価を新生児40人に行い、その結果と医学的情報をもとに新生児科医と理学療法士により、正常、境界(要経過観察)、異常(理学療法介入)の3グループに分類して、それぞれのスコアを比較検討したので報告する。
【方法】対象:NICUにて管理をうけた新生児40人。方法:出産予定日の前後2週間以内に神経学的評価(34項目)を行った。正常、境界(要経過観察)、異常(理学療法介入)の3グループに分類し、結果をスコア化し、比較した。分析には一元配置分散分析を用い、各群の比較にはBonferroni/Dunn検定を用いた。有意水準は5%とした。【結果】グループの分類:新生児期の状態が正常と判断されたのは20人(GA:29W6.2D±3W6.9D,出生体重BW1071.4±489.2g)、要経過観察で境界と判断されたのは10人(GA29W4.3D±5W0.2D,BW1340.8±957.1g)、早期に異常を示し、リハビリ介入が必要と判断されたのは10人(GA33W0.8D±6W0.2D、BW1974.5±980.8g)であり、確定診断のついていない1人を除いて、全員に明らかな脳障害が認められた。グループ属性については、出生体重(BW)において統計的な有意差を認め、正常群に比べて異常群で大きい値となった(p<0.05)。スコアの比較:正常(28.1±2.9)、境界(25.7±3.2)、異常(20.1±5.5)の3グループの中で正常が最も高いスコアを示し、異常群が最も低いスコアを示した(p<0.01)。正常群と境界群の間には統計的に有意差はみられなかった。評価チャートcolumn5の数の比較:3グループ間では異常群が最も高い値となった(p<0.01)。
【考察】Dubowitsらは、満期産児を対象とした評価では、全体の90%以上が30以上のスコアであったと報告している。この結果によれば、30未満のスコアの児に関しては何らかのフォローが必要と考えられるが、実際に評価を行うと、対象児のほとんどが低出生体重児であったため、正常と判断されたグループでもスコアが25から31の範囲に分布しており、新たに基準を設ける必要があると思われる。今回の比較では、経過観察が必要とされた児と正常児の間に統計的な差は認められなかったが、スコアの分布からみてみると、25未満のスコアに関して注意が必要と考えられる。異常群は、3グループ間で最も低い得点を示しており、20未満のスコアに関しては重度の発達障害を伴うことが予想される。今回の研究では、新生児期のみの判断において検討を行った。境界群の10人のうち6人が数回のフォローで理学療法を終了している。このことからも、境界群の長期的な予測は難しいが、早期介入において、Dubowitz改訂版評価スコアは、フォローの判断基準の一つとなりうると考える。
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© 2004 日本理学療法士協会
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