理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 543
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神経系理学療法
脛骨神経縮小術前後の下肢機能の変化について
*安達 みちる横畠 由美子
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抄録
【はじめに】痙縮の脳神経外科治療の一つに、選択的末梢神経縮小術が報告されている。今回、内反尖足に対して脛骨神経縮小術を行い、4ヶ月以上経過観察した5症例の術前後の下肢機能を評価したので若干の考察を加え報告する。
【対象】当院で脛骨神経縮小術を行った独歩可能な脳性麻痺児5名(両麻痺4名、片麻痺1名)。男性2名、女性3名。年齢4~9歳。
【方法】術前、術直後(1週以内)、術後数ヶ月以降の足関節底屈筋緊張、足関節背屈ROM、随意的足関節背屈運動、立位保持姿勢、歩行立脚期前半について評価した。筋緊張評価にはModified Ashworth Scale (MAS)を使用し、立位保持姿勢と歩行立脚期前半は、踵接地の可否と術後出現または変化した下肢の随伴症状を評価した。
【結果】MASは術直後より全例1段階以上低下し、ROMも術後拡大見られたが、最終評価時には双方とも術前の値に近づく傾向が見られた。随意的足関節背屈運動は、術後2例で出現し、3例で背屈運動の可動範囲が増していた。立位保持時の踵接地の状態は、4例で術前不能から術直後可能となり3ヶ月以上維持されたが、その後、随意的には踵接地可能から困難へと変化していた。この内、2例が踵接地時外反扁平を伴っていた。術前より踵接地していた1例は、術直後足底屈運動の弱化で、足背屈外反と股膝屈曲が増大し立位保持不安定となったが、5ヵ月後には足底屈運動が回復、随伴症状の改善も見られた。9ヵ月後には内反出現、12ヵ月後には踵接地困難となった。歩行立脚期前半は、術直後全例踵接地し、1~9ヵ月後には踵接地にて股・膝伸展、体幹側屈の減少など術前より歩容改善した時期が見られたが、その後、徐々に術前の歩容に近づく傾向であった。
【考察】脛骨神経縮小術施行後、痙縮が緩和され、ROMが拡大し、痙縮により阻害されていた随意的足関節背屈運動が行い易くなったと考える。本手術は侵襲が少なく翌日から下肢への荷重が可能という利点がある。術後数日から立位にて踵への体重負荷とその中で体重移動に対する足・膝・股・体幹のバランス反応を児の意識下で促すなどのPTを施行し、踵接地での経験を通して歩容など改善が見られた。その後術前に近づく傾向が見られたが、その要因の一つとして、日常の動作で、術後立位での足部の使い方の経験が術前に経験・学習された方法を修正しきれなかったと考えられ、立ち上がり等他の動作分析や児の認識などの評価も必要と感じた。術後数年経ても機能拡大を維持している症例の報告もあるが、小児症例は再発しやすいとの報告もある。今回の5例の症状も術前に近づく傾向が見られたが、今後その要因を探索し、一時的にも改善された機能を維持していくための理学療法の検討が必要と考える。
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© 2004 日本理学療法士協会
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