理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 568
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神経系理学療法
脳卒中片麻痺患者の重心移動距離と環境要因との関連性
*林 真範濱本 龍哉杉原 時習堀野 麻衣子大山 玲奈佐藤 一成石川 直人佐々木 学森 宏明
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抄録
【目的】支持基底面内で随意的に重心を移動する能力は、歩行獲得に重要な能力だが、脳卒中片麻痺患者は麻痺側および非麻痺側への体重移動が困難な場合がある。その際、移動する側に平行台や壁を設置すると体重移動が上手く行えることを経験する。このことから、片麻痺患者は誤った身体認知や過剰な転倒への恐怖感により誤った安定性限界を認識し、実際に動ける範囲よりも狭い範囲でしか動けていないと考えられる。そこで、周りに何もない空間と、壁・平行台を置いた時の重心移動距離を比較し、環境の変化が重心移動距離に関与するかを検討した。
【対象・方法】高次脳機能障害を有さない脳卒中片麻痺患者10名(平均年齢65.2歳、院内歩行は全員自立)と、高次脳機能障害を有する脳卒中片麻痺患者10名(痴呆2名、半側無視3名、注意障害2名、失語3名、平均年齢63.7歳、歩行能力は院内自立3名、見守り5名、介助2名)であり、全員指示理解可能であった。アニマ社製重心動揺解析システムG5500を用い、左右最大重心移動距離を測定した。実験肢位は裸足にて両足部80度開脚し、踵内側が10cm離れる立位とした。体重移動は骨盤から最大限に行うこととした。周りに何も無い条件(以下無条件)では正面の1点を注視しながら左右へ、壁条件では壁、平行台条件では平行台をそれぞれ注視しながら、壁・平行台に近づくように体重移動することとした。手順はまず無条件で測定後、壁条件または平行台条件で測定した。測定時間は左右各20秒で2回測定し、平均値を求めた。壁条件と平行台条件の測定は同一日には実施せず、測定間隔は5日以内とした。統計処理は対応のあるt検定を用いた。
【結果】壁条件時、高次脳機能障害の有無にかかわらず、麻痺側・非麻痺側共に重心移動距離は有意に増加した。平行台条件時、高次脳機能障害無し群は麻痺側、非麻痺側共に有意に増加した。高次脳機能障害有り群は麻痺側が有意に増加した。さらに、壁・平行台条件共に麻痺側重心移動距離は非麻痺側無条件時と同程度の値となった。また、20人中15人が壁または平行台があると安心できる、目標物となり移動しやすいと答えた。移動しにくいと答えたのは壁が4人、平行台が1人であった。
【考察】壁・平行台条件による重心移動距離の増加は、壁・平行台の目標物としての働きや、転倒への恐怖が軽減されたためと考える。壁・平行台条件時の麻痺側重心移動距離が非麻痺側無条件時とほぼ同程度の値となったことは、片麻痺患者が過剰な転倒への恐怖により、誤った安定性限界を認識していることを示しており、壁・平行台は自分の安定性限界を正しく認識させ、重心移動距離の増加に有効であることが示唆された。しかし、壁・平行台の感じ方は個々によって異なることがあり、壁・平行台が転倒を防止し、安心感を与えるものとして認識させることが重要だと考える。
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© 2004 日本理学療法士協会
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