理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 573
会議情報

神経系理学療法
床反力からみたプッシュアップ動作の運動学的解析
*藤井 利裕大嶋 一志武田 正則
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】脊髄損傷者のプッシュアップ動作は体幹を挙上する際、上肢に多大な負担を強いられる。またその手部の支持面の状態によっても大きく異なってくる。そこで今回我々は床反力計を用いて4パターンの異なる手部で支持したプッシュアップ動作を分析することを試みたので報告する。
【対象】健常人男性10名、平均年齢は27.6±3.6 歳、平均身長は170.0±6.6cm、平均体重は60.5±6.7kgであった。
【方法】測定装置を作成し床反力計上に設置し、長座位からのプッシュアップを行わせ一側上肢に負担される力を測定した。そして手関節、肘関節には電気角時計(当院にて作製したひずみゲージを応用した一軸型フレキシブル関節角度計)を装着させ各関節の運動角度と床反力を同時に記録した。上肢支持はプッシュアップ台を使用(プッシュアップ台)、手指伸展位での手掌支持(Palm)、手指屈曲位での基節骨支持Fistgrip)、指立て支持(Finger)の4パターンとした。プッシュアップの運動はメトロノームにあわせて最初の一秒でアップ(挙上期)、一秒間保持(保持期)、一秒間でダウン(下降期)のサイクルとし数回実施した。結果はパーソナルコンピューターを用いて処理を行った。
【結果】垂直成分に関しては保持期に相違を認めた。プッシュアップ台は他のものに比べ振幅が大きく、Palmは最も平坦であった。前後成分に関しては各パターンにて一定の傾向はみられなかった。側方成分に関しては方向は全て外側であった。挙上期、下降期はPalmが最も速く、次にFingerであった。他は緩やかであった。肘関節角度に関してはプッシュアップ台の変動が最も大きく、Palmの変動が最も少なかった。Palmは保持期に完全伸展していた。手関節角度に関してはプッシュアップ台の変動が大きく、他はほぼ一定のままであった。
【考察】Palmでのプッシュアップが最も安定していると考えられる。これは1サイクルのなかで手、肘関節の角度変動が最も少なかった。また垂直成分の保持期の波が一番安定しており側方成分の挙上期、下降期が一番速かったことよる。これは手掌全体で体重を支持することにより荷重面が他の方法より安定性を確保させ易い理由によると考えられた。この解剖学的安定が波形に反映したと考える。プッシュアップ台では垂直成分の保持期の波が一番不安定であった。これは他のプッシュアップパターンに比べ重心が高く挙上されていることと、これを支持する肘の変動角度も大きく不安定なままで保持されていることによると考えられた。
【まとめ】健常者を対象に長座位からの4パターンの異なる手部でのプッシュアップ動作をさせその床反力と肘、手関節の変動角度を測定した。Palmが最も安定しており、このパターンを訓練において優先的に考慮すべきだと考えた。
著者関連情報
© 2004 日本理学療法士協会
前の記事 次の記事
feedback
Top