理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 574
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神経系理学療法
高位頚髄損傷者のプッシュアップ動作を可能にする道具の有効性についての運動学的考察
*山西 新南野 博紀奥田 邦晴
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抄録
【はじめに】プッシュアップ(以下、PU)動作は、頚髄損傷者(以下、頚損)の日常生活における基本動作の中で、褥瘡の予防や移乗動作において欠かせないものである。文献によると頚損が実用的なPU動作を可能とするのは、ZancolliのC6B2以下のレベルとされている。しかし、あるC5B者はギャッチアップベッドの脚部を屈曲させることでPU動作を可能としベッド上での移動や更衣に生かしている。また、あるC6B1者は車への移乗時にドアの継ぎ手部分に頭部を乗せ、両上肢と頭部の3点支持により車への移乗を可能としている。このようにPU動作を行いやすいよう何らかの道具を用いることでC6B1以上の頚損でもPUを可能とし日常生活に活用していることがしばしば見られるが、道具の有効性に着目した研究は少ない。そこで今回、高位頚損を対象に、PU動作と道具との関係について比較検討し、その有効性を検証し、考察した。
【対象と方法】対象は、C5・C6完全頚損、男性4名(C5B:1名、C6B1:2名、C6B2:1名)とした。平均年齢は32±4.1歳で、受傷後年数は12.5±2.6年であった。殿部下の圧をモニターするために床反力計上でPUを行い、その様子をデジタルビデオカメラ4台で録画した。画像の取り込み周波数は60Hzとした。解析にはビデオ式三次元解析装置(ToMoCo VM)を用い、PU動作の上行時間(運動速度)、保持時間(安定性)、殿床距離に着目してPU動作の能力を評価した。開始姿勢は両手を体側に接地した長坐位とし、道具を用いる場合はこの姿勢に以下の条件を加えて行った。条件1:膝下に三角台を設置する。条件2:前方に頭乗せ台を用意して額をつける。
【結果】頭乗せ台の利用は、ほとんどの被験者において運動速度と安定性の面で効果的であった。ただし、1名のC6B1においては、PU能力が低下した。また、三角台の利用はC5Bの被験者にとって特に有効であった。
【考察】頭乗せ台を利用すると頭部で支持が可能となり前方への転倒の危険がなく安心して体幹前傾することができるため、PUを行いやすい開始姿勢をとることができ、ほとんどの被験者に効果的であった。ただ、頭部が固定されるため、殿床距離に関しては増大しなかった。三角台を利用すると股関節屈曲位となり、前方への転倒の危険性が少なくなる。特にC5Bでは、基本肢位よりも骨盤の前傾・体幹の前屈・手の位置を前方につくことが可能となり、重心位置を前方へ移動することができたため、PU能力が向上したものと考えられる。また、PU能力が低下した被験者は、関節拘縮や身長・体重などの身体的特徴が原因となりPU能力の低下につながっていた。理学療法の臨床場面においても、高位頚損がPU動作を獲得し日常生活に生かしていくためには、身体的特徴を考慮した道具の利用が効果的であることが示唆された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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