抄録
【はじめに】脊髄血管障害による脊髄性麻痺は非常に稀である。脊髄梗塞は前脊髄動脈またはその主分枝の一つの閉塞によって起こることが多いとされ、脊髄出血は外傷性が多く、血液疾患や動静脈奇形の破裂等によって起こる。今回、我々は脊髄梗塞、脊髄出血により対麻痺症状を呈した2例を経験したので報告する。
【症例1】55歳、女性。夫と2人暮らし。2002年1月17日腰から臀部にかけて激痛及び脱力があり、前医入院。両下肢完全麻痺を呈し、MRI上Th11~12レベルでの脊髄梗塞と診断された(原因不明)。第19病日理学療法が開始され、その後左下肢筋力は徐々に改善したものの右下肢筋力はあまり改善しなかった。第51病日摘便後より肛門部の疼痛を訴え、理学療法進行上の問題となった。第75病日当院へ転院。第77病日理学療法開始となり、肛門部の疼痛、両側の大腿内側部及び膝より末梢でしびれあり。触覚、痛覚は両下肢で鈍麻、脱失を認めた。関節可動域は正常で、筋力は右腸腰筋、股関節外転・内転筋群が1のほかは0、左下肢筋群は2~3レベルであった。寝返り、起き上がりは自立しており、端坐位保持は良好であった。第104病日平行棒内歩行練習を開始するが、左上腕部痛が出現し、あまり行なえず。第121病日車椅子移乗自立。第127病日長下肢装具完成し、歩行練習再開。第202病日交互式歩行器にて連続約30mの歩行可能(近位監視)。第204病日転院。現在も外来通院されており、両側に短下肢装具を装着し、かつ両側4点杖を使用して歩行可能。住宅改造され車椅子生活をしている。
【症例2】65歳、女性。夫と2人暮らし。2002年12月22日左下肢のだるさ出現し、翌23日左下肢の脱力、排尿困難出現。12月27日歩行不能となり当院入院。胸椎MRI上Th6に脊髄出血を認めた(原因不明)。2003年1月22日(第32病日)理学療法開始。痛みやしびれの訴えなく、両下肢完全麻痺を呈した。受動位置覚は両下肢で重度の鈍麻を呈した。知覚はTh10レベル以下で左下肢有意の鈍麻を、痛覚は右足外側及び左下肢で脱失を認めた。以後、両下肢で末梢骨格筋より筋力が回復。第63病日平行棒内立位練習開始。介助にて約15秒の保持可能。第85病日平行棒内歩行練習開始。左下肢遊脚期の股関節内転著明ながらも約1.5m歩行可能。第104病日交互式歩行器歩行練習開始。ごく軽介助にて10mの歩行可能。最終的に両下肢筋力2~4レベル、歩行は歩行器使用下にて約40mをほぼ介助不要で歩行可能となった。第133病日転院。現在は家庭復帰され、屋内を交互式歩行器使用下にて歩行している。
【まとめ】今回の2例はともに原因不明であり、いかに理学療法を進めるべきかという点で苦慮した。しかしながら、基本的には脊髄損傷患者に対するアプローチと同様の方法で進め、現在は2例とも家庭復帰に至っている。脊髄血管障害患者の理学療法についての報告は少なく、今後の報告が期待される。