理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 575
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神経系理学療法
脊髄損傷者における移乗動作(側方アプローチ)の動作解析
*原田 康隆江口 雅之長谷川 隆史
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抄録
【目的】
 脊髄損傷者にとって移乗動作の獲得はADL上重要であることは言うまでもない。しかし、実際の側方アプローチ動作における具体的な指標の報告はほとんどなく、移乗動作訓練時の指導も経験によるところが大きい。そこで、側方アプローチの動作を解析し、その指標から側方アプローチ自立に関与する身体能力因子を探ろうと試みたので報告する。
【対象】
 側方アプローチによる移乗動作が自立しているFrankelの分類A・Bの脊髄損傷者男性4名、年齢22から29歳、機能残存レベルはC6B2・C6B3・Th9・Th10である。
【方法】
 端座位と長座位でのプッシュアップ動作を各2回とベッドから車椅子(以下 B→W)、車椅子からベッド(以下 W→B)への側方アプローチを各1回行った。その動作を身体各部位に12個の反射マーカー(直径30mm)を貼付し、ビデオカメラ4台を使用し撮影した。撮影した画像は三次元動作解析装置(ライブラリー社製 Carrot-in Move-tr/3D)を用いて解析し、各マーカーの変位量、設定されたマーカー間の角度などを計測した。解析の取り込み周波数は30Hzにて行った。
【結果及び考察】
 今回対象者のプッシュアップ能力は端座位で11.88から30.31cm、長座位で13.20から27.77cmで、水上が報告した側方アプローチ不可能群(平均93.45±45mm)よりすべて高値を示した。側方アプローチ時の最大殿床距離はB→Wで10.57から26.08cm、W→Bで12.20から21.81cmであり、最小(C6B2)で10.57cmであった。今回側方アプローチ時の殿部浮上時間は、最長でも2.30秒であり、それほど長い保持時間が必要でなかった。
 側方アプローチ時には体幹前傾角度および頚椎マーカーの前方移動が大きくなるにつれ、全例で最大殿床距離も高くなった。また、頚部マーカーの垂直方向への移動はあまり大きくなかった(B→Wで-4.43から-13.27cm、W→Bで4.51から-11.83cm)。このことより体幹前傾角度は頚部が下方へ移動して増加するのではなく、殿部が挙上して増加することを示した。さらに、頚部の前方移動距離に対し、殿部の前方移動距離は少なかったため、側方アプローチが可能なものは殿部を引き上げる(殿部挙上時に前方移動を制動する)様なプッシュアップ能力を有すると考えられた。殿部(仙骨マーカー)の水平方向の直線移動距離は、最低限座幅以上の移動距離が必要であった(最小値は、C6B2の105%)。両手関節の距離は、B→Wで座幅の146から181%、W→Bで149から177%の幅であった。
 今回対象者が4例と少ないため明らかな指標を出すことはできないが、1.殿部の保持時間はあまり必要でないこと。2.殿部が約10cm以上挙上できること。3.座幅の約150%の幅に手をついて、最低限座幅の距離を殿部を挙上して側方移動できること。4.プッシュアップ時に殿部が大きく前方へ移動しないことが、今回の計測から身体能力因子として考えられた。今後症例数を増やし、さらに検討していきたい。
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© 2004 日本理学療法士協会
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