抄録
【目的】リハビリテーションを行うにあたり、歩行の自立は最大の目標となる。当院整形外科では脊椎疾患が多く、その多くには何らかの歩行障害が生じている。歩行障害があっても十分に自立しているものもあれば、特定の原因を見出せないのに歩行が自立しないものがおり、その特徴を見出すために歩行自立についての調査を行ったので報告する。
【対象】当院で脊椎疾患により理学療法を行った者の内、歩行訓練の行えない重度の麻痺患者を除いた12名の頚椎・頚髄疾患患者を対象とした。平均年齢70.75±6.95歳、その内訳は男性9人、女性3人で、自立群6人、非自立群6人である。ここで歩行自立は病棟からリハ室まで1人で来られることと定義した。疾患の内訳はCSM7人、頚椎後縦靭帯骨化症2人、頚髄損傷2人、頚椎損傷、C1/2脊柱管内腫瘍各1人。
【方法】歩行訓練可能であった頚椎・頚髄疾患患者に対し、年齢、身長、体重、10m歩行速度とその歩数、そこから計算した歩行率、MMT、立位バランス(開眼時と閉眼時の左右片脚立位)、腱反射、感覚について検査を行い、自立群と非自立群について比較した。統計処理は数値データにはエクセルの分析ツールに含まれる、等分散を仮定しない2標本によるt検定を用い、危険率5%とした。質的データについてはMMTは5と4以下、腱反射は減弱~正常群と亢進群、立位バランスは可、不可、感覚検査は異常の有無の2値に分割し、名義尺度として扱った。また質的データは例数が少ないためフィッシャーの直接確率計算法を用い、危険率5%として処理を行った。
【結果】10m歩行時間平均 自立群9.7秒、非自立群19.2秒(P=0.006 β=0.053)、歩数平均 自立群19.3歩、非自立群24.9歩(P=0.036 β=0.424)であった。そしてここから計算した歩行率平均 自立群121.6歩/分、非自立群79.0歩/分(P<0.001 β<0.001)と高度に有意であった。また立位バランスでは開眼での左片脚立位のみ有意差を認めた(P=0.030)。
【考察】歩行自立、非自立を最も明確に分けるのは歩行率であった。歩行率は歩行速度と歩数から求めるが、歩行速度と歩数については結果の項で示した通り両方とも有意ではあるものの、第二種の過誤率が大きく異なり、歩行速度の方がよりはっきりと有意であると言える。そのことから歩行率は歩行速度からの影響を強く受けているものと考えられた。また歩行以外の要素で歩行自立-非自立と関連が強そうだと推察されたのが左片脚立位であった。結果では触れなかったが左右共に片脚立位保持可能だった2名が最も歩行速度が速かったことから、歩行に強い影響を与えると考えられるが、症例数が少ないため明確なことは不明であり、今後も調査する必要性を感じた。