抄録
【目的】
反張膝は基準側面X線撮影法により膝関節最大伸展時に大転子-足外果線がLudloff三角像下頂点より前方を通過するものと定義されているが、臨床的には、大腿骨軸と下腿骨軸とのなす角で測定されることが多い。反張膝の原因としては尖足、膝関節伸筋・屈筋の筋力低下など種々の原因が考えられるが、原発性に発生する反張膝は稀であるとされている。近年、若年女性を中心に反張膝傾向がみられる印象があり、若年女性に実際に反張膝傾向がみられるか否かを明らかにすることを本研究の目的とした。
【方法】
健常女子大学生54名(年齢20.9±0.71歳、身長158.7±5.82cm、体重51.7±6.84kg_)を対象とした。対象者には、事前に研究の主旨および測定に際しての具体的手順を説明し、同意を得た。対象者にはスパッツを着用させ、立位で膝関節を最大伸転位にロックさせたのち、あらかじめ対象者から前方・両側方の同距離にマークした固定位置に設置したデジタルカメラ(FUJIFILM FinePix1400Z)を用いて前方・左右方向の3方向から骨盤の下方を撮影した。
撮影した画像は、画像処理解析ソフトScion image(Scion corporation)を用いて大腿長軸と下腿長軸のなす角度を同一の検者が測定した。なお、膝伸展方向をプラスとし、膝屈曲方向をマイナスとした。また、アンケートにてスポーツ歴、日常使用している靴の種類や使用状況を調査した。
膝伸展角度と、BMI・スポーツ歴・靴の種類との2変量の測定データ間の関連性についてはPearsonの相関分析を用いた。左右の膝伸展角度の比較には、対応のあるt検定を用いて検討した。統計的有意水準は危険率5%未満(p<0.05)とした。
【結果】
左右の膝関節伸展角度は、それぞれ右:6.9±5.65°(-8.3°から20.4°)、左: 6.8±5.68°(-6.4°から18.6°)であり、左右の膝伸展角度には有意差は認められなかった。膝伸展角度を5度単位とした度数分布では、6°から10°の範囲の度数がもっとも多く、膝伸展角度が6°以上の女子大生は右:67%、左:61%であり、11°以上の女子大生は左右とも20%であった。
BMIと膝伸展角度の間、および膝伸展角度とスポーツ歴・ヒールの使用頻度との間にはそれぞれ有意な相関関係がみられなかった。
【考察とまとめ】
一般に、正常膝伸展角度を0~5°以内とされている。本研究では、膝伸展角度を画像上の大腿長軸と下腿長軸のなす角度を画面上から求めるという方法をとっており、レントゲン画像を用いた方法と比較すると測定の信頼性に限界があるものの、専攻研究により検査内信頼性は良好であり、膝伸展角度が6°以上の女子大生は右:67%、左:61%であり、女子大生に反張膝の傾向があることが示唆された。