理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 122
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骨・関節系理学療法
大腿骨頚部骨折患者の早期治療プログラムが受傷後死亡率に与える影響
2001年度と2002年度の受傷後死亡率の検討
*青木 啓成北川 寛之朝倉 大輔関 博大見 朋哲犬飼 紫乃太田 順子有賀 誠
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抄録
【はじめに】当院では2002年8月より大腿骨頚部骨折(以下FNF)の治療プログラムを変更し、治療成績の改善に努めてきた。主な変更点は、術前からのリハビリテーション(以下リハ)介入、術後可及的早期荷重の徹底(骨接合術後は翌日荷重、人工骨頭置換術後はドレーン抜去後全荷重)、365日体制導入、訓練室を使用しない病棟での起立・歩行訓練の徹底、入院時からの訪問リハへの移行を意識した協調体制整備である。これらプログラム変更によって,平均在院日数の短縮(47日から27日へ),歩行獲得率の向上(57%から80%へ)がみられたことを,2003年の関東甲信越ブロック学会にて報告した。一方,FNF患者の年間死亡率は16~36%と高い数値が報告されており,機能的outcomeを論じる上で死亡率の改善も重要な課題である。今回我々はFNF患者の早期治療プログラム導入によって受傷後の死亡率が変化したか調査・検討した。
【対象・方法】2001年8月~2003年1月までの18ヶ月間に,FNFにより当院に入院した146例のうち,追跡調査が可能であった129例を対象とした(Follow-up率88%)。治療プログラム変更前後(2002年8月)で2群にわけ,変更前を従来群(以下A群)66例、変更後を早期群(以下B群)63例とした。受傷から6ヶ月以内に死亡した症例を,入院時記録および電話で追跡調査した。死亡時期について,3週以内、3ヶ月以内、6ヶ月以内の3期に分類し,死亡率について2群間で比較検討した。
【結果】受傷後6ヶ月以内の死亡症例はA群8例(12.3%)、B群7例(11.1%)であり、両群間の死亡率に有意な差は認めなかった。死亡時期について、A群では3週以内1例、3ヶ月以内7例、6ヶ月以内8例、B群では3週以内1例、3ヶ月以内6例、6ヶ月以内7例、であった。受傷後3ヶ月以内の死亡率はA群88%・B群86%であり、ほとんどの症例が3ヶ月以内に死亡していた。死亡例の内訳は自宅退院率A群6例(75%)・B群3例(43%)、退院時の転帰は歩行不可能例A群5例(63%)・B群5例(71%)であった(死亡退院例含む)。
【考察】以上の結果から早期治療プログラムの変更は治療成績の改善にはつながっても受傷後6ヶ月以内の死亡率の減少には影響しなかった。今後はJensen(1979)らによる同疾患の期待生存率の検討から考えて、受傷後1年の死亡率を再検討する必要がある。松林(1998)らは190例のFNF患者を調査し、1年間の死亡率13.2%、死亡症例の58%が3ヶ月以内、85%が6ヶ月以内に死亡したと報告している。今回の我々の結果は受傷後6ヶ月間の調査であるが、3ヶ月以内の死亡率が80%以上と高く、受傷後3ヶ月間が患者の生命予後にとって重要であると考えられる。高齢FNF患者においては受傷後3ヶ月間の死亡率が高いことを十分に考慮し、退院後のQOLを重視した早期自宅退院の検討が必要である。
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© 2004 日本理学療法士協会
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