抄録
【はじめに】第38回本学会において我々は、膝前十字靱帯再建術後の関節可動域(以下ROM)と1年後の前方安定性の関係を報告した。今回は症例を増やし、術後の前方不安定性再発に影響する他の因子についても検討したので報告する。
【対象と方法】当院にて膝前十字靱帯再建術を行った症例のうち半月板修復術を同時に施行した者を除く127名を対象とした。使用腱は半腱様筋+薄筋腱(STG)が102名(男28名、女74名)、骨付き膝蓋腱(BTB)が25名(男19名、女6名)であった。前方安定性はMEDmetric社製KT-2000を用いて徒手最大ストレスの前方移動量を測定し、術後1年時に健患側差が3mm以上の症例を不安定群とした。使用腱による不安定例出現率の差を比較した。また、STG使用例に対して性差、術前のKT値、半月板部分切除術施行の有無および術後ROMについて検討した。ROMは2,4,6週,2ヶ月,3ヶ月のexercise直前・直後に測定し、伸展についてはhell-height difference(HHD)を用いた。検定は比率の差による検定を使用した。
【結果及び考察】不安定例はSTG使用例27名(26%)、BTB使用例3名(12%)に認め、両者に有意差はなかった。STG使用例の不安定群は男6名(21%)、女21名(28%)で、性差は認められなかった。術前のKT値では健患差を8mm以上と未満に分けると、8mm以上の群で有意に不安定群が多かった(p<0.01)。半月板部分切除による影響をみると、半月板部分切除を行っていない症例では51名中7名(14%)に不安定群が出現したのに対し、部分切除施行例では51名中20名(39%)と有意に不安定出現率が高く(p<0.01)、特に両側部分切除例は6名全員に不安定性が再発していた。術後ROMと不安定例出現率の関係をみると、術後の屈曲ROMが大きい症例に不安定例の割合が多い傾向にあった。術後の各時期におけるex.前屈曲ROMと不安定例出現率の関係を検討したところ、術後2週目では110度以上と未満の症例間で、術後4週目は130度、6週目は140度を境界としてそれぞれ有意に不安定群が多かった(p<0.05)。同様の検討で、ex.前のHHDが小さいほど不安定例が増加する傾向にあり、術後2,6週目のex.前HHDは1cm、4週目では2cmを境界として不安定例出現率に有意差を認めた(p<0.05)。また、屈曲ROM、HHDともex.前後の差が小さいほど不安定例出現率が高かった。以上のことから半月板部分切除の有無、術前のKT値、術後のROMは膝前十字靱帯再建術後の不安定性の出現に影響があると考えられる。また、術後6週目までは時期に適したROM制限が必要だと考える。