理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 154
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骨・関節系理学療法
全人工膝関節置換術後における大腿四頭筋等尺性収縮訓練の筋電図学的検討
*岡田 芳郎宮崎 哲哉神津 玲杉浦 武矢野 歩横田 美由紀清水 順子伊藤 恭兵荒巻 さと美吉田 正弘
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抄録
【はじめに】全人工膝関節置換(以下TKA)術後早期では,大腿四頭筋等尺性収縮訓練(以下セッティング)が一般的に行われている。しかし,実際に背臥位で行うセッティングでは,筋収縮が得られにくい場合がある。そこで今回の研究では,TKA術後早期の患者にて,セッティング時の姿勢の変化が大腿四頭筋の活動性にどのように影響するかを検討した。
【対象】当院にて,TKA術後にPTを施行し,T字杖にて歩行自立している患者12名,12膝を対象とした。内訳は,男性4名,女性8名。下肢筋力はMMT3~4。年齢69.4±7.2歳,BMI24.5±2.8,術後経過日数20.6±3.9日,膝屈曲角度115.8±9.7°膝伸展角度-14.2±3.6°であった。
【方法】表面筋電計(ノラクソン社製,マイオシステムMC4)を用い,以下に示すセッティングにおける内側広筋(以下VM),外側広筋(以下VL),大腿直筋(以下RF)の筋電図波形の積分値を計測した。セッティングは,1)背臥位で足関節自動背屈と同時(以下SET),2)長座位で1と同様(以下長座位SET),3)直立位(以下立位SET),4)足部回外10°の立位で股関節内転と同期(以下同期SET)の4種類とした。計測は5秒間の最大努力性収縮に続く5秒間の弛緩を連続3回行った。SETにおける計測値を100%として,各姿勢ごと筋別の計測値の換算値を算出し,積分筋電図波形のピーク時を中心とした1秒間の平均値を各筋の最大筋放電量(以下%MVC)として比較した。さらに各筋の%MVCをVM/VL,VM/RFとして比率を算出し,各筋の活動性を比較した。統計処理は分散分析を用い,有意水準は5%以下とした。
【結果】各筋別の%MVCは,長座位SET;VM188.5%,RF132.9%,VL179.1%。立位SET;VM152.4%,RF137.6%,VL154.7%。同期SET;VM178.2%,RF150.6%,VL167.4%であった。VMおよびVLではSETと長座位SET間,SETと同期SET間,RFではSETと同期SET間で有意差を認めた。各筋における%MVCの比率は,長座位SETでVM/VL119.7%,VM/RF167.4%。立位SETでVM/VL95.8%,VM/RF127.8%。同期SETでVM/VL103.0%,VM/RF127.6%であった。長座位SETにて比率が大きくなる傾向をみたが,有意差は認められなかった。
【考察】本研究にて,SETと比較して,長座位SETはVMおよびVLが優位に働き,同期SETは,全ての筋が優位に働くことが示唆された。長座位SETは股関節屈曲により,股関節伸展のモーメントが得られやすく,同時に二関節筋であるRFの働きが抑制され,単関節筋である広筋群の活動性が上昇したと考えた。一方同期SETでは,股関節内転がVMおよびVLに対する伸張刺激となり,VMおよびVLの活動性が上昇することにより,膝関節の安定性が増したと考えられる。その上での膝関節伸展を行ったためにRFの活動性も上昇したと考えた。今回の結果より,TKA術後早期患者におけるセッティングは,長座位にて関節安定性を促し,その後立位にて患者の能力的な向上を目的とした訓練に移行することが有効であると提案する。
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© 2004 日本理学療法士協会
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