抄録
【目的】我々は、美容と歩行希望を有する断端形成の不十分な大腿切断入所者に対し、大腿義足を作製し良好な結果を得たので報告する。
【義足作製までの経緯】症例は81歳の女性で、平成6年脳梗塞により右上下肢の不全麻痺を呈し、一本杖歩行となる。平成13年6月両下肢血行障害により左大腿切断術を施行される。この際、今後立位歩行は不可能として断端形成されなかった。同年10月当施設に入所となる。入所時の日常生活動作は寝返り・起き上がりは一部介助、立位保持はほぼ全介助、移乗・移動は一部介助であった。平成14年7月、美容と起立移乗能力の改善を目的に義足を作製することになる。
【義足作製上の問題点】1)切断部の断端形成が行われておらず大腿骨断端が突出し、かつその部分が骨粗鬆症となっており骨折の危険性がある。
2)切断から日数が経過しており、切断側、非切断側下肢筋力がともに弱化している。
3)肥満:BMI 23.7kg/m2
【大腿義足の特徴】1)ソケットは差し込み式とし、断端部に力が加わらないように大腿前面をきつく、断端部は広く作製した。
2)膝継ぎ手は立ち座り時に断端部に力のかかる危険性を考慮して荷重ブレーキとした。
3)ソケット内での断端の動きを抑制し坐骨荷重を確実にするために、ソケット上縁を高くした。
4)ソケット上縁を高くしたことで生じる座位姿勢の不自然さを軽減するために、ソケット型にくりぬいたシートを作製した。
【結果】断端部の免荷が保たれているかを確認するために、表示記録装置とセンサーを用いて、断端直下と断端直下から前後左右へ各3.5cm離れた場所の計五ヶ所にかかる圧力を、端座位、立位、平行棒内片脚立位時と片脚挙上時でそれぞれ測定した。測定は任意の単位(Arbitrary Units: AU)として記録したが、1AUは約10gであった。断端直下の圧は、端座位、立位、片脚立位、片脚挙上の順で、0.5AU、18.6AU、1.4AU、0.8AUであった。同様に断端直下から前3.5cmでは、0.1AU、0.3AU、0. 7AU、2.3AU、後ろ3.5cmでは、0.3AU、7.5AU、14.9AU、0.2AU、右3.5cmでは、0.5AU、0.5AU、6.5AU、0.2AU、左3.5cmでは、2.4AU、0.7AU、6.0AU、1.6AUであった。
症例の義足作製前後の日常生活動作は、寝返り・起き上がり動作が一部介助から自立へ、立位保持が一部介助から自立へ、平行棒内歩行が不能から一部介助へとそれぞれ改善した。
【考察】今回義足を作製したことで、義足による体重支持が可能になり、残存下肢筋力が不十分であっても立位保持時間を延長することが可能となった。これにより、立位・座位バランスが改善することでこれらの姿勢を保持することの恐怖心も消え、日常生活で使用される頻度も増加し、結果的に寝返りや起き上がりなどの床上動作の改善や、日常生活での気力や意欲の充実につながったものと考えられる。