理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 234
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骨・関節系理学療法
当院における人工股関節置換術後の健康関連QOLの検討
*伊藤 沙夜香小羽 正昭渡井 陽子中村 真弓石黒 正樹廣瀬 和義
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キーワード: THA, QOL, SF36
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抄録
【目的】
人工股関節置換術(以下THA)施行後の患者に対し、患者の視点から個人の健康感をとらえた指標である健康関連QOL(以下HRQOL)、及び股関節機能評価について調査し、検討したので報告する。
【対象】
当院において手術支援ロボットであるROBODOC system を用いてTHAを施行した患者13名(男性3名、女性10名;平均年齢56.8±8.8歳)。
【方法】
日本整形外科学会股関節機能判定基準(以下JOA)及び10m歩行速度、HRQOLを入院時、術後3ヶ月目に評価した。継続評価可能であった8名に対しては術後6ヶ月目に同様の評価を行った。
10m歩行速度は10m直線上を3回測定し、平均値を採用した。HRQOLはMOS36 items short form health survey (以下SF36)を使用して評価を行った。SF36は36項目からなるアンケート質問表であり、PF(身体機能)、RP(日常役割機能;身体)、BP(体の痛み)、GH(全体的健康感)、VT(活力)、SF(社会生活機能)、RE(日常役割機能;精神)MH(心の健康)の8つの尺度に分類される。また、身体的尺度(PCS)と精神的尺度(MCS)の2分類での評価も可能である。JOAの各項目の得点、10m歩行速度、SF36の各尺度を入院時、術後3ヶ月、6ヶ月で比較し、JOAとSF36の改善の関係を調べた。SF36は年齢と性別に応じた国民標準値との比較も行った。統計的手法はWilcoxonの符号付順位和検定、Spearmanの順位相関、Mann‐WhitneyのU検定を用いて検討した。危険率は5%未満を有意とした。
【結果】
入院時と術後3ヶ月、6ヶ月のJOA全項目と10m歩行速度、SF36のPF、RP、BP、PCSにおいて有意な改善が認められた。術後3ヶ月のSF36は国民標準値と比較し、PF、RP、VT、SF、REで有意に低値を示した。術後6ヶ月では、国民標準値と比較し有意に低値を示した項目はRP、MHの2項目であり、GH、SF、REにおいては国民標準値に達していた。
また、術後3ヶ月ではJOAの項目うち日常生活とPCSに有意な相関が認められた。術後6ヶ月ではJOAの歩行能力と日常生活においてPCSとの相関が認められた。
【考察】
術後3ヶ月の時点で、主観的にも客観的評価においても身体機能の改善を認めた。特に、歩行能力の改善と日常生活動作が容易になることは、身体面におけるQOLの改善に寄与すると予想される。
術後3ヶ月では改善が認められなかった社会生活機能、日常生活への精神的な制限は術後6ヶ月の時点で改善がみられた。THA後は脱臼肢位の制限があるため、身体的な日常生活の制限だけでなく、脱臼に対する不安など精神面への影響が生じると考えられる。
 今後も継続した評価を行ない、HRQOLの推移を検討していきたい。
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© 2004 日本理学療法士協会
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