理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 235
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骨・関節系理学療法
大腿骨頸部骨折後患者に対する在宅リハビリテーションメニューによる介入効果
*藤田 博暁森 隆之吉羽 誠治栗原 美智内山 覚国分 江美佳宗藤 明子山口 勇荒畑 和美太田 隆石橋 英明潮見 泰蔵
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抄録
【目的】我々は,前回のPT学会において,大腿骨頸部骨折患者の退院後ADLと運動機能との関連について報告した。今回は,維持期を迎えた大腿骨頸部骨折患者に対する機能予後の改善を目的とした「在宅リハビリテーションメニュー」を作成し,その介入効果について無作為割付研究を行ない,バランス能力を改善することができたので報告する。
【対象と方法】対象は,平成11年1月から平成13年5月までに当センターにおいて大腿骨頸部骨折の治療を受けた症例の内,調査時に痴呆がなく歩行が可能であり,本研究について同意が得られた37名(平均年齢78.9歳)である。対象者には十分な説明を行った後,無作為に介入群(20名)と対照群(17名)に分け,調査開始時にADLや要介護度に加えて,運動機能評価(下肢筋トルク,10m歩行速度,Timed Up & Go Test,重心動揺検査,重心の左右移動距離,Functional Reach Test)を行った。介入群には「在宅リハビリテーションメニュー」を指導し,在宅でのトレーニングを促した。その後,両群ともに3ヶ月後,6ヶ月後に同様の評価を行い,開始時との比較を行った(分散分析,有意水準5%未満)。なお,トレーニングメニューの特徴は,次の4点である。1)特殊な道具を使わず在宅で簡単に安全にできる運動。2)膝や足部の柔軟性を図る運動。3)足部機能の改善を図る運動。4)荷重感覚を意識し,固有受容器を刺激する運動。
【結果】対象のうち3回の評価が可能で,メニュー実施日数が全期間の3分の2以上であった介入群7名,対照群13名を評価対象とした。BADL,IADLおよび要介護度では介入群と対照群の間では有意な差はみられず,両群とも6ヶ月後の機能は維持されていた。運動機能評価では,下肢筋トルク,10m歩行速度,Timed Up & Go Testでは有意な改善は認めなかった。しかし,重心の左右移動距離,Functional Reach Testでは介入群において3ヶ月・6ヶ月後に有意な改善を認めた。
【考察】近年,高齢者に対する転倒予防に関する報告が多く,運動介入として機器を用いた監視型トレーニングが実施されている。しかし,維持期を迎えた骨折後の患者に対する介入研究についての報告はみられていない。
 今回我々が作成したトレーニングメニューは,足部機能の改善や下肢への固有受容器を活性化するなど,バランス能力の改善を目的とした内容である。その結果,重心の左右移動距離やFunctional Reach Testなどのバランス能力の改善を得ることができた。一般に高齢者の姿勢制御能力では,「足関節戦略」に比べて「股関節戦略」を利用しているといわれ,足部機能の改善とバランス能力との関連が報告されている。今回作成したメニューは,このような「足部戦略」を活性化することができたと考える。
【結語】維持期の大腿骨頸部骨折患者に対して「在宅リハビリテーションメニュー」の介入効果に関する無作為割付研究を行った。このようにバランス機能の改善を図ることで,再転倒予防や機能予後の改善への有効性が示された。
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© 2004 日本理学療法士協会
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