抄録
【はじめに】近年呼吸器疾患などの内部疾患を中心に、健康関連QOL(以下HRQOL)は測定尺度の一つとして使われている。整形外科疾患においても術前と術後の比較はいくつかなされている。しかし機能評価と患者自己満足度に依存しているHRQOLとは若干の隔たりを感じる。今回我々は、手術に至った腰部疾患における術前機能評価およびHRQOLを調査したので報告する。
【対象と方法】対象は2002年5月から2003年7月までに当院で腰部疾患として観血的療法に至った患者のうち、術前評価が可能であった146例(腰椎椎間板ヘルニア59例、腰部脊柱管狭窄症40例、腰椎すべり症35例、変性側弯症5例、圧迫骨折2例、脊柱後弯症2例、脊髄腫瘍2例、腰椎分離症1例)、男性90名、女性56名、平均年齢55.6歳であった。調査内容として、腰部機能評価には日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定規準(以下JOA)を用い、トータルスコア、自覚症状、他覚所見、ADLのスコアをそれぞれ100として、指数点数を求めた。HRQOLにはMOS SF-36 Item Health Survey(以下SF-36)を用い、身体機能(以下PF)、日常役割機能・身体(以下RP)、体の痛み(以下BP)、全体的健康感(以下GH)、活力(以下VT)、社会生活機能(以下SF)、日常役割機能・精神(以下RE)、心の健康(以下MH)以上8項目の点数を求めた。そしてJOAとSF-36の項目別関係を調べた上で、それぞれの群内における項目を比較し、さらに項目を性別で比較した。統計処理には群間の関係においてSpearmanの順位相関係数を用い、r≧0.3を相関ありとした。また群内比較においてFriedmanの検定を、性別比較ではMann-WhitneyのU検定を用いて5%未満を有意差ありとした。
【結果】SF-36とJOAの関係において、トータルスコアはPF,RP,BP,REに、自覚症状はPF,BPに、ADLはPF,RP,BP,REに相関がみられた。他覚症状は相関がみられなかった。項目別スコアは、JOAにおいて他覚所見、ADL、自覚症状の順に高く、SF-36において、BP,RP,VT,GH,RE,PF,MH,SFの順に他の項目より有意に低値を示した。性別比較では、SF-36においてはPF,RE,MHで、JOAにおいては他覚所見で男性が女性より有意に高い値であった。
【考察】腰部疾患における術前の機能評価とHRQOLを検討した。JOAにおいて自覚症状は腰痛、シビレ、歩行の現状を問うためPF,BPと、ADLは身体活動と痛みに強く関係しているためPF,RF,BP,REに相関があると思われた。GH,VT,SF,MHは心理的な影響が強いため相関がみられなかったと考えた。JOAから自覚症状、ADL低下の順に手術に至る傾向があるのではないかと考え、SF-36から自覚症状の中でも痛みに対して影響が強いのではないかと思われた。性別比較では、他覚所見において筋力の設問があるため女性は低く、さらに女性の方が精神的影響を受けやすいと示唆された。