抄録
【目的】
深屈曲可能な機種を用いて行った人工膝関節置換術症例の術後膝関節可動域を諸家の報告と比較するとともに可動域練習の方法を紹介する。
【方法】
深屈曲が可能な機種であるNexgen LPS-FlexもしくはScopio Super-Flex PSを使用し,かつ筆者が担当した27例32膝を対象とした。平均年齢74.7±6.8歳(53から88歳),原因疾患は変形性膝関節症23例28膝,関節リウマチ3例3膝,大腿骨内顆骨壊死1例1膝であった。 術後理学療法は,術翌日よりCPMを開始し,屈曲110°を獲得するまで約10日から2週間継続した。屈曲110°を獲得後,重力を利用した自動運動を開始し,徐々に愛護的自己他動運動へと移行した。伸展可動域練習は術後早期より腹臥位にて足部をベッドの端から出して力を抜くレッグハンギングにて行った。可動域練習時間は30分から1時間で午前と午後の2回行い,さらに夕食後から就寝の間に1回の練習を奨励した。これらの症例に関して,術前および退院時の膝屈曲伸展角度を調査した。
【結果】
術前伸展角度は-10.3±7.4°,術前屈曲角度は134.9±16.6°であった。退院時伸展角度は-2.3±3.6°,退院時屈曲角度は139.7±6.2°であった。退院時屈曲角度が130°未満であったのは1膝(3.1%),130°以上140°未満は8膝(25%),140°以上150°未満は20膝(62.5%),150°以上を獲得できたのは3膝(9.4%)であった。
なお手術から退院までの期間は37.8±14.1日(19から86日)であった。
【考察】
当院における退院時屈曲角度は139.7±16.6°であり,諸家の報告と比較すると同等もしくは優れた結果であった。これらの報告には可動域練習の詳細は記載されていないが,我々の方法は疼痛が少なくかつ良好な可動域が得られると考えている。
我々の症例で退院時屈曲角度140°以上を獲得したのは23膝(71.9%)であり,川口らの17膝中10膝(59%),布留らの4.3ヶ月38膝中19膝(50%)と比較しても満足のいく結果であった。術後平均経過観察期間についてみると我々の37.8日は,これら2つの報告の8.6ヶ月,4.3ヶ月よりはるかに短い。川口らの症例で術後2ヶ月までに140°を獲得したのは5例,3ヶ月以上を要したのが5例であり,術後屈曲角度の推移は術後4ヶ月まで有意な改善がみられると報告した。我々の可動域練習を退院後も継続することでさらなる成績が期待できる。
【まとめ】
1.深屈曲可能な人工膝関節置換術後の退院時関節可動域を調査し,我々の関節可動域練習の方法を紹介した。
2.退院時の平均伸展角度は-2.3±3.6°,屈曲角度は139.7°であった。
3.我々の方法は短期間で良好な可動域を獲得していた。