理学療法学Supplement
Vol.31 Suppl. No.2 (第39回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 325
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骨・関節系理学療法
高齢者における立ち上がり動作直後の重心動揺の収束様式と下肢筋力との関連性について
*三好 圭横川 吉晴木村 貞治神子嶋 誠赤羽 勝司草田 美子松沢 稚恵
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キーワード: 高齢者, 重心動揺, 下肢筋力
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抄録

【はじめに】高齢者の転倒原因の1つとして,立ち上がり動作直後の身体動揺の大きさが挙げられている.我々は,これまで,高齢者の椅子からの立ち上がり動作直後の重心動揺を解析し,高齢者は若年者よりも,安静時の動揺まで収束するのに時間がかかることを認め,第37回の本学術大会において報告した.そこで,今回は,椅子からの立ち上がり動作直後の重心動揺をより詳細に解析し,具体的な転倒予防の指針を検討することを目的として,前後方向における重心動揺の収束様式と下肢筋力との関連性について検討した.
【対象】2003年長野県A村において実施された高齢者健康づくり体操に参加した65歳以上の住民のうち,介助や支持物なしで椅子からの立ち上がりが可能で,重度の整形外科的疾患を有さない男性7名,女性27名の計34名を対象とした.年齢は,65歳~89歳で,平均74.0歳であった.全ての対象者は,研究の趣旨についての説明を受けた上で,研究に対する協力を承諾した.
【方法】(1)重心動揺の測定:膝関節角度を90度に調整できる椅子からの立ち上がり動作直後の重心動揺を重心動揺計(アニマ社製,SG-1)を用いて測定し,前後方向(Y成分)のアナログ信号を導出した.測定肢位は,閉足位とし,上肢を体側に垂らした状態で立ち上がり動作を行い,その姿勢を30秒間保持させた.また,立ち上がり動作の終了を同定するために,股関節に電気角度計(P&G製)を装着した.重心動揺計と電気角度計からのアナログ信号は,A/D変換し,多用途生体情報解析プログラム(キッセイコムテック製,BIMUTAS)に取り込み,立ち上がり動作直後のY成分の重心動揺収束様式を解析した.(2)下肢筋力の測定:等尺性筋力測定装置(OG技研製,GT-30)を用いて,膝関節90度屈曲位での最大等尺性膝伸展筋力を測定した.測定は左右ともに2回行い,高い方の値を採用した.次に,得られた値を体重で除した体重支持指数(WBI)を算出し,左右の和の平均値を求めた.(3)統計解析:SPSS(SPSS 11.0J for Windows)を用い,収束様式別のWBIの差異を一元配置の分散分析を用いて解析し,Tukeyの多重比較を行った.有意水準は5%とした.
【結果】椅子からの立ち上がり動作直後におけるY成分の重心動揺の収束様式は,1峰性(1型),2峰性(2型),3峰性以上(3型)の3種類に分類された.各様式におけるWBIの平均値は,1型は0.4±0.1,2型は0.3±0.1,3型は0.3±0.1と, 2型や3型は1型よりも有意に小さな値を示した(p<0.05).
【まとめ】立ち上がり動作直後における前後方向の重心動揺の収束様式が2峰性以上の群は,1峰性の群よりも有意に下肢筋力が低かったことから,高齢者の立ち上がり動作直後での身体動揺の原因の1つとして下肢筋力の低下が関与している可能性が示唆された.今回の結果から,高齢者における椅子からの立ち上がり動作後の転倒を予防するために,下肢筋力の強化が重要であるということが示唆された.

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© 2004 日本理学療法士協会
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