抄録
【目的】近年、健康増進活動として中・高齢肥満者のウォーキング人口が増加してきているが、同時に膝に痛みを訴えるケースも増えてきている。そのため、地域において健康増進に携わる理学療法士は評価・運動指導の際に至適運動強度のみに目を向けるのではなく、膝の状態や機能についても評価し状態を把握した上で運動指導を行う必要がある。また、それらの特徴は、加齢の影響(変形性膝関節症など)で異なってくることが予測されるため、年齢別に膝関節機能とBMIの関係について検討した。
【方法と目的】対象は関西医科大学健康科学センターが実施する関節機能検査を受診した中・高齢者44例(男性9名、女性35名)で、平均年齢(SD)は59.2(10.8)歳、平均BMI値(SD)は28.7(5.3)であった。方法は膝関節機能検査として膝関節可動域(ROM:°)屈曲・伸展、下肢筋の柔軟性(SLR:°、踵-臀部間距離:cm)、体重支持指数(WBI)、下肢最大伸展筋力(Nm/kg)、下肢長尺レントゲンによる骨アライメント(FTA:°)、運動能力テスト(Timed Up & Go、Stairs:共にsec)の結果とBMIを後追視的に調査し、40~49歳(A群)、50~59歳(B群)、60から69歳(C群)、そして70歳以上(D群)に分けて膝関節機能とBMIの相関関係について分析した。
【結果】A群ではBMIとWBIの間に相関が認められ、C群になるとBMIと膝屈曲可動域に相関が認められた。また、最高齢群であるD群ではTimed Up & Go とStairs UpにおいてBMIとの間に相関が認められた。なお、年代間における各検査の平均値の有意差は分散分析の結果認められなかった。
【考察】WBIは中年期においては加齢因子の関与が比較的少ないため、単純に筋力が体重増加に追いついていないといった体重因子のみでの解釈が可能である。しかし、高齢になるほど種々の加齢因子の影響を受け、体重以外の要因も関係しているのではないかと考える。ROM屈曲については通常、中年期においてROMがBMIの影響を受けることは考えにくいが、高齢期になると骨粗鬆症などの器質的な変化が著明となり、BMIの影響を受けやすく、このことが関与しているのではないかと考える。運動能力については、高齢者では増加したBMIに対応できる筋力の増強ができず、結果としてBMIと運動能力が関係するのではないかと考える。また、筋力や運動時間について年代間に有意差が認められなかったことから、加齢に伴い衰退した、筋力以外の要因、すなわち神経系の反応が個人のBMIに見合ったものでないといったことも原因の一つとして考えられるのではないだろうか。以上のことより、肥満高齢者に対して積極的な運動療法を施行する場合には、膝関節機能を十分に考慮し運動処方をすることの重要性が示唆された。